エッチングとは?加工法や種類による違いを簡単に解説
2023年7月7日更新

エッチングは、古くから印刷や銅版画などで使用されてきた技術ですが、現代ではプリント基板や半導体の製造において欠かせない基幹技術となっています。本記事では、エッチングの原理やさまざまな種類について解説し、洗浄工程との関係やエッチングにおける注意点についても詳しく説明しています。
エッチングとは
エッチングは、特定の材料を化学的または物理的に除去することで表面に模様を作り出す技術です。これは主に装飾や工業製品の製造、半導体デバイスの製造に使用されます。
材料の一部を取り除くことで目的の形状を得る、切削や研削で行うよりも精度のよい加工を行う際に用いられます。
エッチング加工の原理
この手法は古代から使用されてきましたが、近年では科学的な方法によってさらに熟練され、精密さが増しています。一方、エッチングには工数が多くかかり、それにより加工にかかるコストが高くなるというデメリットもあります。
エッチング加工は、特定の部分を保護し、残りの部分を酸または別のエッチング剤で浸すことで、保護されていない部分を取り除くことで加工されます。
マスクまたはレジストと呼ばれる保護層を用いて、特定のパターンを形成します。エッチングの基本的な原理は、特定の物質(エッチャント)が材料と反応し、それを溶解または変換することにあります。
まず、所望のパターンが描かれたマスクを対象物質に貼り付けます。マスクの材料はエッチャントに対して耐性を持つものが選ばれ、エッチングが行われる部分だけが露出します。
次に、エッチャントが適用されます。これは化学薬品(酸、塩基、または他の反応性物質)や、物理的手段(例えば、プラズマエッチングの場合のイオンビーム)のいずれかであり、マスクで覆われていない部分の材料と反応します。この反応の結果、露出した材料は溶解し、またはガスとなって飛散します。
エッチングが完了した後、残ったマスクは通常、適切な溶媒で除去されます。その結果、所望のパターンが対象物質に刻まれるのです。
このエッチングの原理は、精密なパターンを形成するために使用されており、電子デバイスの製造から美術品の作成まで、幅広い応用分野に利用されています。
エッチングの種類
エッチングの主要な2つの種類は「ウェットエッチング」と「ドライエッチング」です。
ウェットエッチングとは
ウェットエッチングは、液体のエッチング剤を使用して材料を除去する方法で、電子部品の製造などによく使用されます。この方法は2つの主要なタイプ、すなわち「等方性エッチング」と「異方性エッチング」に分けられます。等方性エッチングは材料の全方向に均等に作用し、異方性エッチングは特定の方向にのみ作用します。これは反応速度によって決まります。
等方性エッチングと異方性エッチングの違い
エッチングは、半導体の製造工程や金属彫刻など、多くの工業製品製造において利用される重要な技術の一つです。その中でも「等方性エッチング」(Isotropic etching)と「異方性エッチング」(Anisotropic etching)は、エッチングプロセスの基本的な種類で、その違いはエッチングがどの方向に進行するかによって区別されます。
①等方性エッチング
等方性エッチングは、物質を均一にエッチングする手法で、エッチングが全ての方向に等しく進行することからこの名前がついています。この手法は、エッチングを行う物質の表面全体に対して均等な影響を与え、エッチングの結果得られる形状は元の形状を維持したままです。しかし、エッチングが全方向に行われるため、精度やコントロールが要求される場合には問題となることがあります。
②異方性エッチング
異方性エッチングは、エッチングが特定の方向にのみ進行することを特徴としています。これにより、物質を一方向にしかエッチングしないことで、特定のパターンや形状を作成することが可能になります。微細加工技術や半導体の製造において、特定のパターンを持つ構造体を製作する際には、異方性エッチングが重要な役割を果たします。
等方性エッチングと異方性エッチングは、それぞれ特性と利点があります。等方性エッチングは、物質の表面を均一にエッチングするため、表面処理や全体の形状を維持する必要がある場合に適しています。一方、異方性エッチングは、エッチングの方向を制御できるため、特定の形状やパターンを作成する際に利用されます。
それぞれのエッチング方法は、使用するエッチング液やエッチング装置、温度や圧力などの条件により異なります。例えば、湿式エッチングは液体のエッチャント(エッチング液)を使用し、ドライエッチングはガス状のエッチャントを使用します。異方性エッチングはドライエッチングの一種であり、プラズマ(電離ガス)を使用して特定の方向にエッチングを行います。
また、等方性エッチングと異方性エッチングは、それぞれのエッチング深さと形状のコントロールにも影響を与えます。等方性エッチングはエッチング深さが一定で、形状は均一ですが、異方性エッチングはエッチング深さと形状をコントロールすることが可能です。これにより、特定のデバイスやアプリケーションに必要な構造を精密に作成することができます。

以上のように、等方性エッチングと異方性エッチングは、エッチングの方向性とコントロールにおいて大きな違いがあります。
それぞれの特性を理解し、適切な状況で適切なエッチング方法を選択することが、精密な製品製造において非常に重要です。
ドライエッチングとは
ドライエッチングは、イオンビームによって材料表面の原子を除去して加工を行う方法で、精密なパターンを作るために半導体産業で頻繁に使用されます。これも「等方向性エッチング」と「方向性エッチング」の2つの主要なタイプに分けられます。
等方向性エッチングと方向性エッチングの違い
等方向性エッチングと方向性エッチング(異方性エッチング)は、材料をエッチング(腐食)する際の2つの基本的な方法であり、その主な違いはエッチングがどの方向に進行するかによります。
①等方向性エッチング
等方向性エッチングは、全ての方向に均等にエッチングが進行する方式で、マスクされていない材料の全面が均一に腐食します。その結果、エッチング面は元の表面と平行な形状を持ち、表面全体に対して均一な影響を与えます。しかし、エッチングが全方向に行われるため、精度やコントロールが要求される場合には問題となることがあります。
②方向性エッチング
一方、方向性エッチング(異方性エッチング)はエッチングが特定の方向にのみ進行することを特徴としています。これにより、一方向にしかエッチングしないため、特定のパターンや形状を作成することが可能になります。微細加工技術や半導体の製造において、特定のパターンを持つ構造体を製作する際には、方向性エッチングが重要な役割を果たします。
それぞれのエッチング方法は特性と利点がありますが、適切な状況で適切なエッチング方法を選択することが、精密な製品製造において非常に重要です。
エッチングの加工の対象となる材料
エッチングは様々な材料に適用可能で、金属、ガラス、プラスチックなどが対象となります。ウェットエッチングとドライエッチングでは適用可能な材料に違いがあります。
ウェットエッチングでは、金属材料やシリコンなどの半導体、ドライエッチングでは、主にシリコンの加工がメインとなっています。ウェットエッチングでは、強い酸や強アルカリを使用したガラス、セラミックの加工も可能です。
エッチング加工の手順
エッチング加工は主に以下のステップからなります。
- プレパレーション:エッチングを行う対象の表面を清掃し、油脂や不純物を取り除きます。
- マスキング:レジスト(保護膜)を適用し、エッチングを行いたいパターンを作成します。
- エッチング:エッチャント(エッチング液)を対象に適用し、レジストで覆われていない部分を除去します。
- マスクの除去:エッチングが終了したら、レジストを適切な溶剤で除去します。
これらのステップを経て、精密なパターンが材料に刻まれます。各ステップは材料、パターンの詳細、そして目的により調整されます。

エッチングの後処理
エッチングの後処理は、エッチング過程で使用された液体(エッチング液)の適切な処理が必要となる重要なステップです。エッチング液には酸や溶媒などの化学物質が含まれており、これらは人体や環境に有害です。そのため、これらの液体は廃液として適切に管理・処理されるべきです。
廃液はそのままでは自然環境に放出することはできません。これは、液体が土壌や水源を汚染し、生物に悪影響を及ぼす可能性があるからです。したがって、エッチング液を安全に処理するためには、それを中和する方法が必要となります。ここで消石灰の役割が重要となります。
消石灰は酸性の廃液を中和するのによく使われます。酸性のエッチング液に消石灰を加えると、化学反応が起こり、エッチング液の酸性度(pH)が中和されます。これにより、廃液は無害化され、安全に環境に放出できる状態にします。
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まとめ
このコラムでは、エッチングについて、種類、そしてそれぞれの方法のについて分かりやすく説明しました。エッチングは、金属や半導体の表面を化学的に削る方法であり、パソコンやスマートフォンなどの電子機器の製造に欠かせない技術です。エッチングの技術は微細なパターンの形成や電子部品の製造に使用され、現代の産業や科学の進歩に大いに貢献しています。