第一種衛生管理者とは?試験概要や資格取得メリットなど徹底解説!
2024年8月21日更新
常時50人以上の労働者を使用する事業場は、「衛生管理者」を選任しなければいけません。衛生管理者には3つの区分がありますが、「第一種衛生管理者」の資格を有する人は有害業務を含むすべての業種の事業場において衛生管理者になることができます。
今回は、衛生管理者の仕事内容や第一種衛生管理者の資格を取得するメリット、合格するための効果的な勉強方法などについて解説していきます。
国家資格の衛生管理者とは?
衛生管理者は労働安全衛生法によって定められた国家資格で、労働環境の衛生的改善と疾病の予防処置など、事業場の衛生管理をするために必要な資格です。衛生管理者の主な役割は、就労中の労働災害や労働者の健康障害を防止することであり、そのために事業場の衛生管理や労働者の健康管理のほか、労働者への衛生教育や衛生委員会の運営などをおこないます。
常時50人以上の労働者を使用する事業場は、衛生管理者を選任することが義務付けられています。衛生管理者の選任は、衛生管理者を選任すべき事由が発生した日から14日以内におこなう必要があり、衛生管理者を選任したときは遅滞なく、所轄の労働基準監督署に選任報告書を提出しなければいけません。
以下のとおり、事業場の規模によって選任すべき衛生管理者の人数が決められています。
事業場の規模(常時使用する労働者数) | 1人 |
50人以上200人以下 | 2人 |
200人を超え500人以下 | 3人 |
500人を超え1,000人以下 | 4人 |
1,000人を超え2,000人以下 | 5人 |
2,000人を超え3,000人以下 | 6人 |
3,000人を超える場合 | 7人 |
衛生管理者の仕事の魅力
衛生管理の仕事の魅力に一つは、「労働者の健康を守れる」ことです。
たとえば、企業が抱える労働上の課題を解決するために、衛生管理者が労働衛生計画を立てたとします。その計画に従って従業員が団結することで労働環境が改善されれば、事故や病気のリスクが減り、従業員の健康を守ることができます。
そういった、仕事の結果が労働環境の改善という目に見える形で表れやすい点も、仕事に対するやりがいにつながるでしょう。
衛生管理者の仕事の大変さ
衛生管理者の仕事は、常に変化する法規制の遵守、新しい衛生技術の導入、職場のリスク評価といった多岐にわたる責任を伴います。また、従業員や経営陣とのコミュニケーションを取りながら、効果的な衛生管理計画を策定・実施する必要があります。これらの業務は専門的な知識と継続的な学習を要求され、精神的・肉体的な負担が大きい場合もあります。
第一種衛生管理者と第二種衛生管理者の違いは?
衛生管理者には、「第一種衛生管理者」「第二種衛生管理者」「衛生工学衛生管理者」の3つの区分があり、事業場の業種に応じて、どの衛生管理者を選任すべきかが決められています。
業種 | 選任すべき衛生管理者 |
農林畜水産業、鉱業、建設業、製造業(物の加工業を含む)、電気業、ガス業、水道業、熱供給業、運送業、自動車整備業、機械修理業、医療業、および清掃業 | ・第一種衛生管理者 ・衛生工学衛生管理者 ・労働安全衛生規則10条各号に掲げる者(医師、歯科医師、労働衛生コンサルタントなど) |
上記以外の業種 | ・第一種衛生管理者 ・第二種衛生管理者 ・衛生工学衛生管理者 ・労働安全衛生規則10条各号に掲げる者(医師、歯科医師、労働衛生コンサルタントなど) |
第一種衛生管理者と第二種衛生管理者の違いは、有害業務を含む業種で働けるかどうかということです。
第一種衛生管理者は有害業務も含めすべての業種に対応できますが、第二種衛生管理者の場合、有害業務がおこなわれる事業場の衛生管理を担当することはできません。
衛生管理者の2種類の資格について
衛生管理者には、第一種衛生管理者と第二種衛生管理者の2種類の資格があります。これらの資格は、職場の安全と健康を管理するために必要な知識と技能を持つ人に与えられます。それぞれの資格には、管理する職場の種類や範囲に違いがあります。
第一種衛生管理者とは
第一種衛生管理者は、製造業、建設業、化学工業、鉄鋼業など、幅広い業種で必要とされる資格です。この資格を取得することで、職場の安全衛生管理を総合的に行うことができます。第一種衛生管理者の資格は、職場のリスクを適切に評価し、必要な対策を講じる能力が求められます。
第一種衛生管理者の主な業務内容には、職場の安全衛生教育の実施、労働者の健康診断の管理、安全衛生委員会の運営などがあります。また、労働災害の予防や衛生基準の維持、改善に努める役割も重要です。第一種衛生管理者は、特に高い危険性を伴う職場での安全管理において、中心的な役割を果たします。
第二種衛生管理者とは
第二種衛生管理者は、主にサービス業や小売業、オフィスなど、比較的危険性の低い業種で必要とされる資格です。この資格を取得することで、第一種衛生管理者と同様に、職場の安全衛生管理を行うことができますが、対象となる業種が限定されています。
第二種衛生管理者の主な業務内容には、職場環境の改善、労働者の健康保持のための施策の実施、安全衛生教育の推進などがあります。また、労働者の健康診断の実施やフォローアップ、職場のリスクアセスメントなども担当します。第二種衛生管理者は、職場の健康と安全を維持し、労働者が安心して働ける環境を整えるために重要な役割を担います。
衛生管理者の仕事の将来性や需要は?
衛生管理者の仕事は、公衆衛生の重要性が高まり、規制と法規の強化、労働環境の改善への注目、技術の進化に伴い、将来的にも需要が増加する傾向にあります。特にCOVID-19パンデミック以降、この分野の専門知識とスキルがより一層重視されており、安定したキャリアを築ける可能性が高いです。
衛生管理者の仕事内容
衛生管理者の中心となる仕事が、作業環境の衛生管理と労働者の健康管理です。担当する事業場の環境・設備をチェックし、問題点が見つかった場合はすみやかに処置をおこないます。また、労働者への衛生教育や衛生委員会の運営も衛生管理者の仕事であり、健康診断の結果もしっかりと把握しておかなければいけません。異常が見られる労働者がいる場合は、産業医と連携して労働者との面談を設定することもあります。
法律に規定されている衛生管理者の職務
労働安全衛生法第12条では、衛生管理者がおこなうべき具体的な措置として以下の事項が示されています。
(1)健康に異常がある者の発見及び処置
(2)作業環境の衛生上の調査
(3)作業条件、施設等の衛生上の改善
(4)労働衛生保護具、救急用具等の点検及び整備
(5)衛生教育、健康相談その他の労働者の健康保持に関する必要な事項
(6)労働者の負傷及び疾病、それによる死亡、欠勤及び移動に関する統計の作成
(7)その事業の労働者が行う作業が他の事業の労働者が行う作業と同一の場所において行われる場合における衛生に関し、必要な措置
(8)その他衛生日誌の記載等職務上の記録の整備等
なお、労働安全衛生法の改正によって、以下の事項が総括安全衛生管理者(事業場の安全・衛生に関する業務の統括管理をおこなう者)の職務として追加されているため、衛生管理者の職務にもこれらが含まれることになります。
(1)安全衛生に関する方針の表明に関すること
(2)労働安全衛生法第28条の2第1項、又は第57条の3第1項及び第2項の危険性、又は有害性等の調査及びその結果に基づき講ずる措置に関すること
(3)安全衛生に関する計画の作成、実施、評価及び改善に関すること
衛生管理者は、少なくとも毎週1回作業場などを巡視し、設備、作業方法、または衛生状態に有害のおそれがあるときは、ただちに労働者の健康障害を防止するため必要な措置を講じなければいけません。
衛生管理者の年収はどれくらい?
衛生管理者の年収は、経験、勤務地、企業の規模、資格の種類などによって異なります。一般的に、初任給は年間約300万円から400万円程度で、経験を積み専門性を高めることで年収は上昇します。経験豊富な衛生管理者は年間600万円以上を稼ぐことも珍しくありません。
第一種衛生管理者試験・第二種衛生管理者試験の概要
第一種衛生管理者試験および第二種衛生管理者試験は、職場の衛生管理を担う専門家を認定するための国家資格試験です。これらの試験は、労働安全衛生法に基づき、衛生管理者の知識と技能を評価するものです。
①受験資格は?
衛生管理者試験は基本的に学歴や年齢を問わず受験できますが、受験資格として学歴や実務経験などが求められます。
必要な実務経験年数は、学歴によって異なります。
学歴 | 労働衛生の実務経験年数 |
大学・高等専門学校 | 1年以上 |
高校 | 3年以上 |
学歴問わない | 10年以上 |
②受験費用は?
衛生管理者試験など労働安全衛生法に基づく免許試験は、8,800円で受験できます。
第一種衛生管理者試験と第二種衛生管理者試験で受験料の違いはなく、同じ手数料で受験可能です。
受験料の払い込みは、受験申請書に閉じ込まれている払込用紙を使用します。
郵便局または銀行を利用し、受験者を識別できるように個人名で支払いしましょう。
③有効期限はある?
衛生管理者の資格は、第一種・第二種ともに更新不要です。
ただし、合格後に免許申請をする必要があるため、忘れずに行ないましょう。また、資格を取得しても知識のアップデートは重要です。法律や社会情勢は日々変化するため、常に最新の情報を入手するよう努めましょう。
④合格難易度は?
第一種衛生管理者試験および第二種衛生管理者試験の合格難易度について説明します。
第一種衛生管理者試験の合格難易度
第一種衛生管理者試験は、試験範囲が広く、特に労働安全衛生に関する専門的な知識が求められるため、難易度は比較的高いと言われています。試験科目には、関係法令、労働生理、労働衛生、労働安全などが含まれ、各科目でバランスよく点数を取ることが必要です。特に、労働安全衛生法規の詳細な理解が求められるため、法令に関する知識をしっかりと身につけることが重要です。合格率は年によって異なりますが、概ね40%から50%程度です。
第二種衛生管理者試験の合格難易度
第二種衛生管理者試験は、試験範囲が第一種に比べて狭く、比較的取り組みやすいとされています。しかし、決して簡単ではなく、労働安全衛生に関する基本的な知識をしっかりと理解している必要があります。試験科目には、関係法令、労働生理、労働衛生(作業環境)、労働衛生(健康管理)、労働安全が含まれます。合格率は第一種よりも高く、50%から60%程度となっています。
両試験とも、過去問を繰り返し解くことや、模擬試験を活用することで、試験形式や出題傾向に慣れることが合格への近道です。参考書や講座を利用して計画的に学習することが大切です。
第一種衛生管理者の資格取得メリット
第一種衛生管理者の資格を取得するメリットとしてよく言われるのが以下の点です。
就職・転職に有利になる
一定の規模以上の事業場には衛生管理者を選任することが義務付けられているため、衛生管理者は常に一定のニーズがある資格だと言えます。特に第一種衛生管理者は、有害業務を含むすべての業種の事業場において衛生管理者になることができるため、就職・転職の際の選択肢も広がるでしょう。
性別・年齢を問わず仕事ができる
第一種衛生管理者の仕事は、性別や年齢にかかわらずできる仕事です。第一種衛生管理者は国家資格であり、一度取得すれば生涯にわたって活躍することができます。近年は、定年後の再雇用にも注目が集まっています。社会経験が豊富な人ほど職場の問題点を把握しやすいため、シニア層になってからの転職でも有利になるでしょう。
管理職などへのキャリアアップが期待できる
第一種衛生管理者の資格を持っている人は、人事・総務部門でのキャリアップを目指すことができます。企業によっては、第一種衛生管理者の資格を持っていることを管理職への昇格条件としているところもあるため、将来的に管理職を目指す人は第一種衛生管理者の資格を持っていて損はないでしょう。
資格手当による収入アップが期待できる
企業によっては、第一種衛生管理者の資格を所有している従業員に資格手当を支給しているところもあります。第一種衛生管理者の資格を取得のためには一定のコストがかかりますが、取得してしまえば資格手当による将来的な収入増が見込めるため、投資すべき価値のある資格だと言えるでしょう。
第一種衛生管理者試験に合格するためのポイント
第一種衛生管理者の試験に合格するためには、どのくらいの勉強時間・勉強期間を見込んでおけばいいのかを把握しておきましょう。
資格取得に必要な勉強時間
第二種衛生管理者試験の範囲が「労働衛生」「関係法令」「労働生理」の3科目であるのに対し、第一種衛生管理者試験はこれらに「労働衛生(有害業務に係るもの)」「関係法令(有害業務に係るもの)」の2科目が加わります。計5科目の知識を網羅的に習得するためには、平均的に100時間程度の勉強時間が必要だとされています。
資格取得に必要な勉強期間
第一種衛生管理者試験に合格するための勉強期間は、1日もしくは1週間あたり、どのくらいの勉強時間を確保できるかによって変わってきます。社会人であれば、1日に3~4時間を確保するのは現実的ではありません。たとえば、1日に1時間の勉強時間を設けた場合、100日かければ100時間勉強することができるので、勉強期間は約3ヶ月という計算になります。
第一種衛生管理者試験の効率的な勉強方法
第一種衛生管理者試験に合格するための効率的な勉強方法をご紹介します。
①スケジュールを決める
効率的に勉強を進めたいなら、スケジュールを決めることは必須です。「できるときに勉強する」というように、計画性なく取り組んでいたら合格は遠のいてしまうでしょう。細かくスケジュールを立てて勉強を進めていけば、試験直前になって「間に合わない・・・」といった事態に陥りにくく、落ち着いて本番に臨むことができるはずです。
②自分に合ったテキスト・問題集を選ぶ
基礎知識を習得するためにはテキスト・問題集が欠かせません。しかしながら、衛生管理者関連のテキスト・問題集は数多く発刊されており、「どれを選ぶべきか」で悩む人も少なくありません。自分が分かりやすいと感じるテキスト・問題集を選ぶのが理想ですが、ポイントとしては「薄め」のものを選ぶのが良いと言われます。これは、薄めのテキスト・問題集のほうが挫折しにくく、無理なく最後まで勉強を進められるからです。
③テキスト・問題集を何周もする
第一種衛生管理者試験のテキスト・問題集を一度読んだり解いたりしただけで、すべての知識を習得できる人はいないでしょう。確実に知識を身に付けるためには、同じテキスト・問題集を何周もすることが大切です。最初に読んだときに理解できなくても、2周目、3周目になってくると、様々な知識がリンクして理解しやすくなるものです。
④過去問から出題傾向を把握する
第一種衛生管理者試験に合格するためには、過去問に取り組むことが不可欠です。過去問は「できた・できなかった」ということも重要ですが、「どのような出題が多いのか?」という出題傾向を把握することも重要です。繰り返し過去問を解くことで出題される問題の傾向をつかむことができるので、力を入れて勉強すべきポイントが分かってきます。
⑤アプリをフル活用する
第一種衛生管理者試験に合格するためには、100時間を目安とする勉強時間を確保する必要がありますが、仕事や家事で忙しい人は勉強が進まないケースもあるでしょう。そこで活用したいのがスマホアプリです。衛生管理者試験の対策ができる学習アプリは様々なものがあり、これらを使えば隙間時間をうまく活用して知識を習得できます。同時にスケジュール管理のアプリも活用することで、より効率的に勉強を進められるでしょう。
⑥動画学習を取り入れる
第一種衛生管理者の試験対策としては、YouTubeなどの動画学習を取り入れるのもおすすめです。文字を読むだけでは理解できないことも、視覚・聴覚によって情報を受け取る動画学習ならより理解しやすくなります。テキストや問題集だけだと学習が単調になりがちなので、うまく動画学習も取り入れていきましょう。
⑦講習会に参加する
第一種衛生管理者の試験対策として、講習会に参加するのも効果的です。講習会は全国各地でおこなわれているほか、オンラインで参加できるものもあります。試験に関する最新情報や合格に直結するコツなど実践的な内容を教えてもらえるため、参加することで合格へと近付けるでしょう。
⑧通信講座を受講する
独学で合格を目指す人もいますが、モチベーションを維持できなかったり、分からないことを解決できなかったりして挫折してしまう人も少なくありません。挫折しないようにするためには、通信講座を受講するのがおすすめです。通信講座では、オリジナルのテキストや動画コンテンツを使って自分のペースで学習を進めていきます。分からないことがあれば質問もできるので、途中で挫折することなく着実に理解を深めていけるでしょう。
まとめ
第一種衛生管理者の資格を持っている人は、製造業や工場での就職・転職に有利になります。製造業や工場の仕事をお探しの方は、ぜひ「ジョブ派遣」をご活用ください。ジョブ派遣は、派遣会社(株式会社日輪)が運営している求人サイトで、製造業・派遣社員のお仕事を中心にご紹介しています。独自の研修もご用意していますので、製造業が未経験の方や工場勤務が初めての方も安心してご応募いただけます。
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