【難易度別】溶接資格の種類を紹介 取り方や費用も一覧表で解説
2023年1月24日更新

溶接資格を取得することで工場勤務における収入アップを狙えます。ぜひ、将来の武器にすべく溶接資格を取得してみてはいかがでしょうか。今回は溶接資格の種類や難易度のほか、初心者向け、中級者向け、上級者向けに分けておすすめの溶接資格について解説していきます。
溶接の国家資格
溶接の種類によっては、作業をおこなうために労働安全衛生法などで定められた国家資格が必要になります。溶接の国家資格としては、主に以下のものが挙げられます。
アーク溶接作業者
アーク溶接に携わるには、「アーク溶接等特別教育(正式名称:アーク溶接等の業務に係る特別教育)」という講習を修了する必要があります。講習を修了することで「アーク溶接作業者」という資格を取得することができます。
ガス溶接作業者
ガス溶接に携わるには、「ガス溶接技能講習」という講習を修了する必要があります。講習を修了することで「ガス溶接作業者」という資格を取得することができます。ガス溶接作業者として実務経験を積むことで、後述する「ガス溶接作業主任者」の受験資格を得られます。
ガス溶接作業主任者
ガス溶接作業主任者は、ガス溶接の作業方法の選定や作業者への指示出しなどの管理業務をおこなう責任者としての資格です。上述したガス溶接作業者は実際に溶接作業をおこなう人の資格ですが、ガス溶接作業主任者はガス溶接作業者がいる現場を指揮する人に必要な資格です。ガス溶接作業主任者の資格を取るためには、原則としてガス溶接技能講習を修了してから3年以上の実務経験が必要となります。
ボイラー溶接士
ボイラー溶接士(普通ボイラー溶接士、特別ボイラー溶接士)は、ボイラー(小型ボイラーを除く)、または第一種圧力容器(小型圧力容器を除く)の溶接作業をおこなうために必要な資格です。
資格区分は「特別」と「普通」に分かれています。普通ボイラー溶接士は、溶接部の厚さが25mm以下の場合、または管台、フランジなどを取り付ける場合の溶接作業をすることができます。特別ボイラー溶接士はこのような制限がなく、全ボイラー、および第一種圧力容器の溶接作業をすることができます。
主な溶接資格の種類一覧(難易度や受験資格など)
溶接資格は、一定の溶接作業をおこなうために必ず必要になる国家資格のほか、溶接の技術レベルを証明するのに役立つ民間資格があります。難易度や受験資格なども含め、主な溶接資格の種類をご紹介します。
アーク溶接作業者
- 受験資格:満18歳以上
- 難易度:低(合格率ほぼ100%)
- 受講内容・試験内容など:学科講習2日間(11時間)+実技講習1日間(10時間)
- 受講費用:12,000円~16,000円程度(実施機関による)
ガス溶接作業者
- 受験資格:満18歳以上
- 難易度:低(合格率ほぼ100%)
- 受講内容・試験内容など:学科講習・実技講習2日間(14時間)、修了試験
- 受講費用:14,000円~20,000円程度(実施機関による)
ガス溶接作業主任者
- 受験資格:なし
- 難易度:中(合格率80%~90%程度)
- 受講内容・試験内容など:試験20問
- 3時間・受講費用:6,800円
ボイラー溶接士
- 受験資格:
【普通ボイラー溶接士】1年以上溶接作業の経験がある人(ガス溶接、自動溶接を除く)
【特別ボイラー溶接士】普通ボイラー溶接士免許を受けた後、1年以上ボイラー、または第一種圧力容器の溶接作業の経験がある人(ガス溶接、自動溶接を除く)
- 難易度:中(合格率は普通・特別によって異なる)
- 受講内容・試験内容など:学科試験(40問、2時間30分)、実技試験(1時間)
- 受講費用:
【普通ボイラー溶接士】学科6,800円、実技18,900円
【特別ボイラー溶接士】学科6,800円、実技21,800円
アルミニウム溶接技能者
- 受験資格:
【基本級】1ヶ月以上アルミニウムの溶接技能を習得した満15歳以上の人、軽金属溶接協会の実技講習会で修了証を取得した人
【専門級】3ヶ月以上アルミニウムの溶接技能を習得した満15歳以上の人で、受験種類に対応する基本級の資格を所有する人 - 難易度:低(合格率80%程度)
- 受講内容・試験内容など:学科試験+実技試験
- 受講費用:学科1,210円、実技6,490円~(試験区分によって異なる)
ステンレス鋼溶接技能者
- 受験資格:
【各種類の基本級】1ヶ月以上溶接技術を習得した15歳以上の人
【各種類の専門級】3ヶ月以上溶接技術を習得した15歳以上の人で、各専門級に対応する基本級の資格を所有する人 - 難易度:低(合格率80%程度)
- 受講内容・試験内容など:
被履アーク溶接、ティグ溶接、ティグ溶接と被履アーク溶接との組み合わせ、ミグ溶接またはマグ溶接 - 受講費用:学科1,100円、実技は種類によって異なる
溶接作業指導者
- 受験資格:満25歳以上
- 難易度:低(合格率ほぼ100%)
- 受講内容・試験内容など:講習3日間、受講後、学科試験あり
- 受講費用:50,000円程度
溶接管理技術者
- 受験資格:理大卒業、および要実務経験(級によって異なる)
- 難易度:中(合格率は級によって異なる)
- 受講内容・試験内容など:筆記試験Ⅰ
- Ⅱ、および口述試験・受講費用:50,000円程度

初心者向けの溶接資格
アーク溶接作業者
アーク溶接作業者は溶接工の入門資格とも言える資格です。アーク溶接等特別教育を修了することで、「アーク溶接作業者」の資格を取得することができます。基本的には、講習を受講することで誰でも取得することができます。
アーク溶接作業者に関しては、以下の記事で詳しく解説しています。
>> アーク溶接資格の取り方は?種類や条件、費用や難易度などを解説
ガス溶接作業者
ガス溶接作業者も溶接工の入門資格と言える資格です。ガス溶接技能講習を修了することで、可燃性ガスと酸素を用いる金属の溶接や溶断、加熱の作業に携われるようになります。基本的には、講習を受講することで誰でも取得することができます。
中級者向けの溶接資格
ボイラー溶接士
普通ボイラー溶接士の資格を取得すると、ボイラーや第一種圧力容器の溶接業務のうち、溶接部が厚さ25mm以下のケースや管台、フランジなどの取り付けをおこなうことができます。特別ボイラー溶接士の資格を取得すると、ボイラーや第一種圧力容器のすべての溶接業務をおこなうことができます。ボイラー溶接士の資格を取得するためには、筆記試験と実技試験をパスする必要があります。合格率の目安は以下のとおりです。
- 特別ボイラー溶接士の合格率:筆記試験70%程度、実技試験90%程度
- 普通ボイラー溶接士の合格率:筆記試験55%程度、実技試験60%程度
上級者向けの溶接資格
溶接作業指導者
溶接作業指導者は、溶接施工現場において、溶接作業および関連作業の指導・管理をおこなうとともに、溶接技能者の技量向上にあたる指導者向けの資格です。特に技量を必要とされる手溶接や半自動溶接に関する指導・教育をおこないうる熟練した溶接技能と実務経験が要求されます。受験資格として一定の実務経験が必要になりますが、試験自体の難易度は低く、合格率はほぼ100%です。
溶接管理技術者
溶接管理技術者は、鋼構造物の製作などにおいて溶接・接合に関する設計、施工計画、管理などをおこなう技術者向けの資格です。官公庁が発注する工事や認定工場には、溶接管理技術者が常駐することが要求されます。特別級、1級、2級に区分されており、試験は筆記試験と口述試験によっておこなわれます。合格率は特別級で18%程度、1級で23%程度、2級で55%程度です。
日本溶接協会の溶接技能者資格
日本溶接協会では、JIS、WESなどの規格に基づいて溶接技能者の評価試験をおこない、資格認証をしています。溶接技能者資格は、基本級(下向姿勢の溶接)と専門級(立向・横向および上向姿勢の溶接、ならびに管の溶接)があり、さらに試験材料の種類、厚さ、溶接方法などの組み合わせによって区分されています。各試験は学科試験と実技試験によっておこなわれます。
溶接技能者資格の一覧
溶接 | 対象材料 | 溶接方法 |
手溶接(アーク溶接) | 炭素鋼 | ・被覆アーク溶接 ・ティグ溶接 ・ティグ溶接と被覆アーク溶接の組み合わせ |
手溶接(ガス溶接) | 炭素鋼 | ・ガス溶接 |
半自動溶接 | 炭素鋼 | ・マグ溶接 ・ティグ溶接とマグ溶接の組み合わせ ・セルフシールドアーク溶接 |
ステンレス鋼溶接 | ステンレス鋼 | ・被覆アーク溶接 ・ティグ溶接 ・ティグ溶接と被覆アーク溶接の組み合わせ ・ミグ溶接またはマグ溶接 |
チタン溶接 | チタン チタン合金 | ・ティグ溶接 ・ミグ溶接 |
プラスチック溶接 | 塩化ビニル ポリエチレン ポリプロピレン | ・ホットジェット溶接 |
銀ろう付 | ステンレス鋼 炭素鋼 銅 | ・銀ろう付 |
すみ肉溶接 | 炭素鋼 | ・被覆アーク溶接 ・マグ溶接 |
石油工業溶接 | 高張力鋼 耐熱鋼 ステンレス鋼 | ・被覆アーク溶接 ・ティグ溶接 ・ティグ溶接と被覆アーク溶接の組み合わせ |
基礎杭溶接 | 炭素鋼管 | ・被覆アーク溶接 ・マグ溶接 ・セルフシールドアーク溶接 |
適用している規格と資格の適用事例
資格の種別 | 適用している規格 | 資格の適用事例 |
手溶接技能者(ガス溶接を含む) | JIS Z 3801 手溶接技術検定における試験方法及び判定基準 WES 8201 手溶接技能者の資格認証基準 | 一般構造物の手溶接及び溶接技能者の基本的な資格として適用 |
半自動溶接技能者 | JIS Z 3841 半自動溶接技術検定における試験方法及び判定基準 WES 8241 半自動溶接技能者の資格認証基準 | 一般構造物の半自動溶接に適用 |
ステンレス鋼溶接技能者 | JIS Z 3821 ステンレス鋼溶接技術検定における試験方法及び判定基準 WES 8221 ステンレス鋼溶接技能者の資格認証基準 | ステンレス鋼の溶接に適用 |
チタン溶接技能者 | JIS Z 3805 チタン溶接技術検定における試験方法及び判定基準 WES 8205 チタン溶接技能者の資格認証基準 | チタンの溶接に適用 |
プラスチック溶接技能者 | JIS Z 3831 プラクチック溶接技術検定における試験方法及び判定基準 WES 8231 プラクチック溶接技能者の資格認証基準 | プラクチックの溶接に適用 |
銀ろう付技能者 | JIS Z 3891 銀ろう付技術検定における試験方法及び判定基準 WES 8291 銀ろう付技能者の資格認証基準 | ろう付作業に適用 |
すみ肉溶接技能者 | WES 8101 すみ肉溶接技能者の資格認証基準 | すみ肉溶接に適用 |
石油工業溶接士 | JPI-7S-31 溶接士技量検定基準(石油工業関係) | 石油工業関係装置、機器などの溶接に適用 |
基礎杭溶接技能者 | WES 8106 基礎杭溶接技能者の資格認証基準 | 基礎杭の溶接に適用 |
溶接技能者資格の受験方法と流れ
①受験申請
WEB申請「e-Weld」もしくは、紙の受験申請書によって申請をおこないます。
>> e-Weld(溶接技能者各種WEB申込み) 日本溶接協会公式サイト
②受験
受験票、作業着、安全防具、工具類、溶接材料、筆記用具(学科試験受験時)などを持参して、試験を受けます。
③合否通知
受験後2ヶ月程度で合否の通知があります。新規受験において、実技試験に合格し、学科試験が不合格だった場合、45日以内に申し込めば1回に限り学科追試を受験できます。新規受験において、学科試験に合格し、実技試験が不合格だった場合、学科合格証明書が交付されます。学科合格証明書を提示することで、3年間は実技試験のみの受験ができます。
④認証手続
試験の合格者には適格性証明書が交付されます。
溶接技能者資格のサーベイランス(資格継続の手続き)
溶接技能者の技量は不変のものではなく、常に資格に対応する仕事を継続することや定期的なトレーニングを積むことによって維持されるものです。また、視力の変化のように技能者の健康状態にも影響されます。そのため、溶接技能者資格および適格性証明書の有効期間は登録日から1年間とされており、継続するためにはサーベイランスの手続きが必要です。
資格および適格性証明書の有効期間延長
資格および適格性証明書の有効期間を延長したい場合は、有効期間の終了する前3ヶ月以内にサーベイランス(引き続いて業務に従事していることを確認する審査)を受けなければいけません。サーベイランスの審査に通ることで、資格および適格性証明書の有効期間が1年延長されます。ただし、サーベイランスによる有効期間の延長は2回が限度とされています。
資格の再評価
サーベイランスを2回受けて、さらに資格を継続したい場合は、資格の再評価(所有する資格の実技試験)を受けなければいけません。再評価の試験は、資格および適格性証明書の有効期間が終了する前8ヶ月から2ヶ月の期間に受験する必要があります。再評価の試験に合格した場合は、新たに資格認証がおこなわれます。
まとめ
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※参考:日本溶接協会(JWES)