労働基準法とは?休憩時間について10時~15時まで働いた場合など事例別にお答え
2024年8月21日更新
工場での仕事は労働時間が長くなると、集中力の低下や疲労から作業効率が落ちたりミスが増えたりします。これを防ぐために重要なのが、適度に休憩をとることです。今回は、労働基準法で規定されている休憩時間のルールについて解説するとともに、休憩に関する様々な疑問にお答えしていきます。
労働基準法における休憩の定義と休憩時間
休憩時間とは「従業員が労働から完全に離れることを保障される時間」と定義されています。そして、労働基準法第34条では、労働時間が6時間を超える場合は少なくとも45分の休憩を、労働時間が8時間を超える場合は少なくとも1時間の休憩を与えなければならないと規定されています。
労働時間 | 休憩時間 |
6時間以内 | 不要 |
6時間超~8時間まで | 45分以上 |
8時間超 | 1時間以上 |
たとえば、10時間休憩なしの場合は当然、労働基準法違反になりますし、10時間労働で休憩が45分の場合も違法になります。一方で、5時間勤務の場合は休憩なしでも問題はありません。
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労働基準法における「休憩の3原則」とは?
労働基準法第34条では「休憩の3原則」が定められています。
休憩の3原則①「休憩は労働時間の途中に与えなければいけない」
労働基準法第34条第1項では、休憩時間を労働時間の途中に与えなければならないと規定されています。「労働時間 → 休憩時間 → 労働時間」となっている必要があるので、たとえば業務開始前や業務終了後に休憩を与えることは認められません。
休憩の3原則②「休憩は一斉に与えなければいけない」
労働基準法第34条第2項では、休憩時間は一斉に与えなければならないと規定されています。たとえば、「Aさんは12時~13時に休憩」「Bさんは13時~14時に休憩」というように、従業員によって休憩時間を変えることは原則として認められません。
休憩の3原則③「休憩時間は自由に利用させなければいけない」
労働基準法第34条第3項では、休憩時間は従業員を労働から解放し、自由に利用させなければならないと規定されています。会社は従業員の休憩時間の使い方に干渉することはできず、従業員が自由に過ごせる時間にしなければいけません。たとえば、来客対応や電話対応をしながらの休憩は従業員が労働から解放されているとは言えないため、休憩時間として認められません。
工場は一斉休憩のところが多い?
休憩の3原則の一つに「休憩は一斉に与えなければいけない」というものがありますが、これには2つの例外があります。
例外①一斉に休憩を与えるのが難しい業務の場合
運輸交通業、商業、金融広告業、通信業、接客娯楽業、官公署など、業務の性質上、従業員が一斉に休憩をとることで業務に支障が出る可能性がある業種は、一斉に休憩を与えなくてもよいとされています。
なお、製造業はこの例外に該当しないため、工場の従業員は一斉に休憩をとるのが原則です。「一斉」というのは「事業所単位で一斉」という意味なので、現場のスタッフも事務のスタッフも含め、全員が一斉に休憩をとることになります。
例外②労使協定を締結した場合
例外①に該当しない業種でも、労使間で労使協定を結ぶことで休憩を一斉に与えず、交代制にすることができます。工場の場合も労使協定で定めておけば、作業レーン単位で休憩をとったり、「現場のスタッフは12時から13時まで休憩、事務のスタッフは12時半から13時半まで休憩」というように職種や部署ごとに休憩時間をずらしたりしても問題ありません。
とはいえ、工場の場合、休憩時間がバラバラだと安定的にラインを稼働させることができなくなるので、一斉に休憩をとるようにしているところが多いようです。
休憩時間のQ&A事例~こんな場合はどうなる?
休憩時間に関するルールは会社によって異なりますが、労働基準法などの法令に違反するルールは認められません。よく問題になる事例をもとに、アウトかセーフかを見ていきましょう。
Q:正社員と派遣社員・アルバイトで休憩の取り扱いが違ってもいい?
労働基準法は雇用形態の違いにかかわらず、一律のルールが適用されます。正社員であろうと、派遣社員、アルバイトであろうと、同じ「労働者」として扱われます。そのため、「正社員には休憩を与えて派遣社員には休憩を与えない」「アルバイトの休憩時間は正社員の半分にする」といった異なる取り扱いは認められません。
Q:トイレに行く時間は休憩時間になる?
「トイレ休憩」という言葉がありますが、トイレに行くのは生理現象によるものであり、トイレが済んだらすぐに業務に戻るのが通常です。そのため、トイレに行く時間は、従業員が会社の指揮命令下に置かれていると判断されます。つまり、休憩時間ではなく労働時間に当たるということです。
ただし、頻繁にトイレに行ったり長時間トイレに行ったりして、スマホで遊ぶなど業務と無関係のことをしている場合、話は別です。このように、生理現象によるトイレとは言えない事実が認められる場合は、もはや従業員が会社の指揮命令下に置かれているとは言えないので、労働時間ではなく休憩時間であると判断されます。それだけでなく、職務専念義務違反として懲戒処分の対象になる可能性もあります。
Q:タバコを吸いに行っている時間は休憩時間になる?
タバコを吸いに行っている時間は業務に従事していないことは明らかですが、完全に会社の指揮命令下から解放されているわけではなく、業務上の指示があればすぐに業務に戻るのが通常です。そのため、喫煙が常識的な回数・時間であれば、トイレに行く時間と同じように労働時間として扱われます。ただし、回数や時間が常識を逸脱して多い場合は休憩時間とみなされますし、職務専念義務違反として懲戒処分などのペナルティを課されることもあります。
Q:休憩時間は複数回に分けてもいい?
休憩時間は、複数回に分割して付与しても問題ないとされています。労働時間が7時間の場合、45分以上の休憩を付与する必要がありますが、たとえば、「30分+15分=45分」という形でもOKですし、「15分ずつの休憩を3回=45分」という形でもかまいません。
Q:10時から22時まで働いた場合の休憩時間は?
労働基準法では労働時間が8時間を超える場合は、1時間以上の休憩が必要だとされていますが、それ以上の労働時間に関しては休憩時間の規定はありません。それゆえ、労働時間が8時間を超えたら、その後どれだけ残業をしても休憩時間は1時間で問題ないということになります。10時から22時まで働けば労働時間は12時間に及びますが、休憩時間は1時間でかまいません。
しかし、労働時間が長くなるほど疲労や集中力の低下からパフォーマンスが落ちるため、会社によっては残業時間に応じて一定の休憩時間を設けているところもあります。一般的には、残業が2時間を超える場合に15分~30分程度の休憩を与えることが多いようです。
Q:労働時間が6時間ぴったりや8時間ぴったりの場合の休憩時間は?
労働基準法では、休憩時間が発生するのは労働時間が6時間を「超える」場合だとされています。労働時間が6時間ぴったりの場合、6時間を超えていないので休憩時間は発生しません。6時間5分や6時間10分など、6時間を1分でも超える場合は少なくとも45分の休憩が付与されます。8時間ぴったりの場合も同様で、8時間を超えていないので休憩時間は1時間以上ではなく45分以上ということになります。
Q:10時~15時など、労働時間が5時間の場合は休憩なし?
派遣社員やアルバイトの場合、労働時間が4時間や5時間など短めになるケースは多々あります。労働基準法では、労働時間が6時間以下の場合は休憩を与えなくてもよいとされています。ただ、休憩を与えてはいけないわけではないので、会社が短時間勤務者に対して独自に休憩を与えることは問題ありません。
Q:休憩がいらない場合も休憩をとらなければいけないの?
休憩をとらずに、休憩時間のぶんだけ労働時間を短縮して早く帰りたいと考える人もいるでしょう。また、休憩なしで働くことで労働時間を長くして、給料を増やしたいと考える人もいるでしょう。このような理由で従業員から「休憩はいらない」という申し出があっても、会社は従業員に休憩をとらせなければいけません。これは会社の義務なので、従わない従業員がいると会社が労働基準法違反の責任を問われる可能性があります。
Q:休憩時間に賃金は発生する?
会社は、従業員が労働をしていない時間については賃金を支払う必要はありません。このことを「ノーワーク・ノーペイの原則」と言います。ノーワーク・ノーペイの原則があるので、休憩時間は賃金が発生しません。たとえば、労働時間が7時間の場合は45分の休憩が必要なので、実質的な労働時間は6時間15分になり、6時間15分に対して賃金が発生することになります。
Q:始業前に作業服に着替える時間は労働時間になる?
会社から作業服の着用を義務付けられている場合、始業前に作業服に着替える時間は労働時間となります。たとえば、9時~15時の6時間勤務の場合、休憩は発生しませんが、8時50分に出社して9時まで作業服に着替えているのであれば、労働時間は8時50分~15時で6時間15分となります。そのため、少なくとも45分の休憩が発生することになります。終業後に着替える時間も同様に、労働時間として扱われます。
Q:休憩時間中に寝てもいいの?
休憩の3原則の一つに「休憩時間は自由に利用させなければいけない」という原則があります。会社は従業員の休憩時間の使い方に干渉することはできないので、従業員は休憩時間中に寝てもかまいません。休憩時間に食事をするのも、外出するのも、スマホでゲームをするのも従業員の自由です。ただし、会社の服務規律には従う必要があります。
工場の仕事は休憩が大事!
人は、疲れたり集中力が低下したりすると、普段ならあり得ないようなミスをすることがあります。工場の仕事は、一つのミスによってライン全体に影響が出たり、重大な事故を招いたりするおそれがあります。そのため、お昼休憩以外に2時間に1回程度、小休憩をとるようにしている工場も少なくありません。休憩時間は生産性がゼロになりますが、適度に休憩をとったほうがトータルで見たときの生産性は向上するものです。
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まとめ
工場の仕事では、長時間立ちっぱなしでライン作業に従事する人もいますし、同じ場所に座りっぱなしで作業をする人もいます。このような人は、休憩時間にストレッチなどの軽い運動をすることをおすすめします。また、夜勤で働く人は休憩時間に10分でも15分でも仮眠をとるのが良いでしょう。心身ともにリフレッシュしてその後の仕事に臨めるよう、自分なりの休憩時間の使い方を考えてみてください。
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