半自動溶接とは?種類や資格、メリットを紹介

2024年8月21日更新

半自動溶接とは?種類や資格、メリットを紹介

溶接と聞くと、手作業で行うイメージが強いかもしれません。しかし、技術の進化により、現代の溶接は手動だけでなく、機械を使った半自動溶接も多く使われています。
今回のコラムでは、半自動溶接とは何か、その種類や資格について、そして手動溶接との違いと共に、どのようなメリットがあるのかを分かりやすく解説します。溶接の世界に足を踏み入れてみましょう!

半自動溶接とは?

半自動溶接とは、機械を使って溶接作業を行う方法のことを指します。手動溶接と比べると、作業が簡単で、より高い生産性が得られることが特徴です。半自動溶接では、トーチで加熱して溶かすワイヤーが『自動で供給される』半自動溶接機を使う溶接のことです。そのため、一つ一つの作業が手動溶接に比べて迅速で、効率的に行うことができるのです。

半自動溶接は溶接作業において、溶接金属の供給は機械によって、溶接作業自体は人間の手で行われることから「半自動」と呼ばれるようになりました。全ての作業が機械でできる訳ではないので、「半自動」という名称が使われています。

具体的には、半自動溶接機はトーチ(溶接銃)から溶接ワイヤーや溶接棒を自動的に供給し、その溶接金属を素材に溶かして接合を行います。作業者はトーチを操作してアークを発生させ、溶接位置を指定するなどの手動作業を担当しますが、溶接金属の供給自体は機械によって自動化されているのです。

なお、半自動溶接は「全自動溶接」と対比されることがあります。全自動溶接では、溶接作業全体が完全に機械化されており、作業者の手動操作が一切不要となります。しかし、全自動溶接は高度な設備と制御が必要で、特定の産業や用途に限られた利用が一般的です。一方、半自動溶接は機械と作業者の協力によって行われるため、幅広い分野で利用され、一般的な溶接方法として広く普及しています。

半自動溶接とアーク溶接との違いは?

アーク溶接とは、アーク放電を利用した溶接全般を指す言葉です。半自動溶接はアーク溶接の一種になります。アーク溶接には消耗電極式アーク溶接と非消耗電極式アーク溶接の2つの主要な種類があります。
消耗電極式アーク溶接は、一般的なアーク溶接の方法で、溶接に使用される電極が溶けることによって溶接金属を供給します。作業者は電極を素材に接触させ、アークを発生させながら溶接作業を進めます。溶接金属は電極から供給されるため、作業中に電極が消耗していきます。
非消耗電極式アーク溶接は、溶加材と呼ばれる溶接棒を使用し、電極は溶融せず溶加材(溶接棒)を母材へ溶かし込む溶接方法をいいます。電極を消耗しないので消耗電極式アーク溶接と言われています。

半自動溶接は、ワイヤーの供給が自動化された消耗電極式アーク溶接と言えます。
半自動溶接では、作業者はワイヤーの供給位置を調整したり、トーチを操作して溶接位置を指定するなどの手動作業を行いますが、溶接金属の供給は機械によって行われます。このため、作業者は溶接ワイヤーの素材に対して正確な位置を維持することに集中し、作業の手間が少なくなります。

半自動溶接は、作業効率が良く、特に大量生産に適しています。機械による自動供給により、一定の品質を維持しやすく、効率的な溶接作業を実現します。そのため、自動車産業や建築業界などで広く利用されています。

半自動溶接の種類

溶接時には、溶融金属を保護するためにガスがアーク周辺に流され、空気との接触を避けます。半自動溶接は、使用されるガスによって種類が分かれます。それぞれの特徴を見ていきましょう。

CO2溶接

CO2溶接は、半自動溶接の中でも代表的な方法です。二酸化炭素ガスを保護ガスとして使用するため、酸素と反応することなく、強力な溶接が可能です。自動車産業や建築業界などで幅広く使われています。

MAG溶接

MAG溶接は、Metal Active Gas(活性ガス金属アーク溶接)の略で、保護ガスとして活性ガスを使用します。強力な溶接ができる一方、酸素や水分に敏感なので、風通しの悪い場所では使用が制限されることがあります。

MIG溶接

MIG溶接は、Metal Inert Gas(不活性ガス金属アーク溶接)の略で、保護ガスとして不活性ガスを使用します。軽量素材の溶接に適しており、DIYやホビー用途でもよく利用されます。

半自動溶接の資格

半自動溶接の仕事は、資格がなくても行うことは可能ですが、資格を取得することで自身の技術やスキルを証明し、求職活動や昇進の際に有利になることが期待されます。

特に、半自動溶接に関する資格の中で最も有名なのが「半自動溶接技能者資格者」です。この資格を取得するには、一定期間の実務経験が必要となります。具体的な受験資格は、15歳以上で溶接経験が1か月以上あれば「基本級」を受験することができます。「専門級」の受験可能年齢は「基本級」と同じですが、溶接経験は3か月以上、「基本級」の資格を取得しているか同時受験という条件があります。半自動溶接技能者資格者は、専門知識と実務経験を備え、高水準の溶接技術を持つことが証明されます。

この他にも半自動溶接に関する資格はありますが、受験資格などに大きな違いはないことが多いです。各地域で溶接の資格取得講座が開催されているので、興味を持ったらぜひ参加してみると良いでしょう。

日本溶接協会の半自動溶接技能者資格のページ  <http://www.jwes.or.jp/mt/shi_ki/wo/archives/05/>

半自動溶接のメリット

半自動溶接にはさまざまなメリットがあります。その中からいくつかをご紹介します。

溶接の速度が速い

半自動溶接は、自動的に供給されるワイヤーによって迅速な作業が可能です。手動溶接よりも素早く作業が進められ、大量生産にも適しています。作業効率が向上するため、短時間で多くの溶接を行うことができます。特に大規模なプロジェクトや産業での利用において、効果的な時間管理と生産性向上に寄与します。

比較的簡単にできる

半自動溶接は、自動化されたワイヤー供給により作業者の負担を軽減します。機械が一部の作業を代行してくれるため、手動溶接に比べて比較的容易に作業を行うことができます。これにより、初心者や経験の浅い溶接者でも比較的短期間で溶接技術を習得することができます。高い溶接技術を持つ職人だけでなく、多くの人々にとって利用しやすい溶接方法と言えます。

適応できる金属の種類が多い

半自動溶接のメリットの一つは、適応できる金属の種類が非常に多いことです。半自動溶接は、さまざまな種類の金属に対応できるため、鉄やアルミニウム、ステンレス鋼など、異なる特性を持つ金属の溶接にも適しています。これにより、様々な産業や用途において広範囲にわたる溶接作業が可能となります。さらに、半自動溶接は厚みの異なる金属の溶接にも対応できるため、より幅広い場面で適用できる利点があります。

半自動溶接機の種類

半自動溶接機は、ガスシールドアーク溶接機 、ノンガス溶接機と大きく2つに分かれます。各種類の特徴を見ていきましょう。

ガスシールドアーク溶接機

ガスシールドアーク溶接機は、半自動溶接の種類で説明したように、溶接の際にガスを使う機会のことです。このガスはシールドガスと呼ばれ、溶接箇所を保護するために使用します。

溶接作業中、ガスシールドアーク溶接機の電気アークが金属を加熱して溶かしますが、この際に酸素との接触を避けるためにガスが利用されます。ガスがアーク周囲を覆うことで、溶融した金属が酸素と反応せず、酸化を防ぐ効果があります。これにより、高品質な溶接を実現できるのです。

ガスシールドアーク溶接機のメリットは、異なる種類のシールドガスを使用することで、さまざまな材料に対応することができます。さらに、シールドガスによって溶接箇所を保護するため、酸素との反応を防ぎ、酸化を最小限に抑えることができます。その結果、高品質な溶接が可能となります。反対にデメリットは、外部からシールドガスを供給する必要があるため、作業現場や設備にガス供給設備を用意する必要があることです。

ノンガス溶接機

ノンガス溶接機は、ガスを必要とせずにフラックスコアワイヤーを用いて溶接を行うタイプの溶接機です。
フラックスコアワイヤーは、内部に特殊な成分であるフラックス(ろう剤)を含んだ溶接ワイヤーのことを指します。フラックスは溶接作業中に溶け出し、溶融した金属を保護する役割を果たします。このフラックスの効果により、溶接箇所が酸素と反応することを防ぎ、酸化を防止します。そのため、外部からガスを供給する必要がありません。

ノンガス溶接機のメリットは、外部からガスを供給する必要がないため屋外や風の影響を受ける環境でも溶接作業が可能です。また、携帯性に優れており、持ち運びが容易です。簡単に使えることからDIYにも適しています。
反対に、ノンガス溶接機のデメリットはフラックスの取り扱いに注意が必要なことです。フラックスは特殊な成分が含まれているため、乾燥した状態で保管・取り扱いする必要があります。湿気を帯びたり、潤った状態だと効果が低下し、溶接品質に影響を及ぼす可能性があります。

半自動溶接機の選び方

半自動溶接機を選ぶ際には、「ガスシールドアーク溶接機」と「ノンガス溶接機」の違いを理解しましょう。ガスシールドアーク溶接機は、シールドガスを使って溶接箇所を保護することで高品質な溶接ができます。一方、ノンガス溶接機はガス不要で作業できますが、ノンガスワイヤーのコストがかかります。

また、最近は両機能を持ったハイブリッドタイプの溶接機も増えています。予算に余裕があるなら、様々な溶接に対応できるハイブリッドタイプを検討してみると良いです。

溶接機の性能は入力電圧にも影響されます。一般的に100Vと200Vがあり、200V方が高出力の為、厚板の溶接ができ仕上がりが良いです。

予算が限られている場合、ノンガス溶接機が魅力的に見えるかもしれませんが、注意点もあります。ノンガスワイヤーのランニングコストが高くなるため、トータルの費用を考慮して選ぶことが重要です。

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まとめ

このコラムでは、半自動溶接の基本的な概念から種類やメリット、資格について解説しました。


半自動溶接は機械を使い、効率的で高品質な溶接が可能な方法であり、ガスシールドアーク溶接機とノンガス溶接機の2つのタイプがあります。適切な入力電圧を選ぶことで、より良い仕上がりを実現できます。

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