危険物取扱者試験とは?甲種・乙種・丙種別に難易度や試験内容の違いを徹底解説
2024年8月21日更新
危険物取扱者の資格を持っていると、化学工場やガソリンスタンドなど危険物を扱う企業への就職・転職に有利になります。企業によっては、危険物取扱者の資格を持っていることを応募の条件としているところもあるので、会社選びの選択肢も広がるでしょう。今回は、危険物取扱者の種類や試験の内容、難易度や合格率などについて解説していきます。
危険物取扱者とは?
危険物に該当するもの
危険物取扱者の資格は「甲種」「乙種」「丙種」の3つに分かれています。種類の違いによって、取り扱いや立ち会い、管理ができる危険物の内容が変わってきます。
▼甲種危険物取扱者
甲種危険物取扱者は、すべての危険物について、取り扱いと定期点検、保安の監督ができます。
▼乙種危険物取扱者
乙種危険物取扱者は、以下のとおり指定された類の危険物について、取り扱いと定期点検、保安の監督ができます。
- 乙種第1類:酸化性固体(塩素酸カリウム、過マンガン酸カリウム、次亜塩素酸ナトリウムなど)
- 乙種第2類:可燃性固体(硫黄、赤リン、マグネシウムなど)
- 乙種第3類:自然発火性物質及び禁水性物質(ナトリウム、リチウム、黄リンなど)
- 乙種第4類:引火性液体(ガソリン、灯油、軽油、エタノールなど)
- 乙種第5類:自己反応性物質(ニトログリセリン、トリニトロトルエン、アジ化ナトリウムなど)
- 乙種第6類:酸化性液体(過酸化水素、硝酸など)
▼丙種危険物取扱者
丙種危険物取扱者は、特定の危険物(ガソリン、灯油、軽油、重油など)に限り、取り扱いと定期点検ができます。
危険物取扱者の資格を取得するメリット
危険物取扱者は、危険物の取り扱いに関する専門的な知識・技能を習得している資格者であり、危険物を安全に取り扱うことにより、職場における事故や災害のリスクを低減する役割を果たします。そのため、危険物取扱者の資格を取得していれば、危険物取扱者の設置が義務付けられている工場や施設への就職・転職が有利になります。
また、直接的に危険物を取り扱う職場でなくても、危険物取扱者の資格を持っている人は安全意識や法令遵守の意識が高いことをアピールできるため、企業から評価されやすくなります。安全管理や環境保護に関する仕事であれば幅広く携わることができるため、就職先・転職先の選択肢も広がるでしょう。
危険物取扱者の受験資格について
危険物取扱者の受験資格についてご説明します。
甲種危険物取扱者試験の受験資格
甲種危険物取扱者試験を受験するためには、以下のいずれかに該当している必要があります。
- 大学等において化学に関する学科等を修めて卒業した者
- 大学等において化学に関する授業科目を15単位以上修得した者
- 乙種危険物取扱者免状を有する者(実務経験2年以上)
- 乙種危険物取扱者免状を有する者
- 修士・博士の学位を有する者
乙種危険物取扱者試験・丙種危険物取扱者試験の受験資格
乙種および丙種の危険物取扱者試験に受験資格はなく、誰でも受験することができます。
危険物取扱者の受験申請方法
危険物取扱者試験の受験申請は、書面申請(願書の提出による申請)と電子申請の2つの方法が用意されています。書面申請の場合は、受験する試験の種類ごとに必要な書類を揃えて申請します。
▼必要書類
- 受験願書
- 甲種危険物取扱者試験を受験する者は、受験資格を証明する書類(卒業証書、免状などのコピー、卒業証明書、単位修得証明書など)
- 乙種危険物取扱者試験で火薬類免状による科目免除を受ける者は「火薬類免状」のコピー
- 丙種危険物取扱者試験で科目免除を受ける者は、消防団長、消防学校長が証明する書類
- すでに「危険物取扱者免状」を取得している者は既得免状のコピー
- 郵便振替払込受付証明書(受験願書添付用)
▼申請窓口
- 各道府県:一般財団法人 消防試験研究センター 各道府県支部
- 東京都:一般財団法人 消防試験研究センター 中央試験センター
電子申請の場合は、以下のURLから申請します。
危険物取扱者試験の受験手数料
危険物取扱者試験の受験手数料は以下のとおりです。
- 甲種危険物取扱者試験:6,600円
- 乙種危険物取扱者試験:4,600円
- 丙種危険物取扱者試験:3,700円
危険物取扱者試験の方法と合格基準
危険物取扱者試験は、マーク・カードを使う筆記試験でおこなわれます。実技試験はありません。
- 甲種危険物取扱者試験:五肢択一式
- 乙種危険物取扱者試験:五肢択一式
- 丙種危険物取扱者試験:四肢択一式
危険物取扱者試験の合格基準
甲種、乙種、丙種、いずれの危険物取扱者試験も試験科目ごとの成績がそれぞれ60%以上で合格とされます(試験科目の免除を受けた受験者についてはその科目を除く)。
危険物取扱者の合格率は?
一般財団法人 消防試験研究センターが公開しているデータをもとに、危険物取扱者の合格率を見ていきましょう。
※参考:試験実施状況|一般財団法人消防試験研究センター
甲種危険物取扱者試験の合格率
甲種危険物取扱者試験の合格率は以下のとおりです。
申請者 | 受験者 | 合格者 | 合格率 | |
令和4年 | 20,001人 | 17,200人 | 6,400人 | 37.2% |
令和3年 | 19,685人 | 16,995人 | 6,815人 | 40.1% |
令和2年 | 21,036人 | 17,957人 | 7,632人 | 42.5% |
令和元年 | 22,765人 | 19,540人 | 7,721人 | 39.5% |
平成30年 | 24,381人 | 20,977人 | 8,358人 | 39.8% |
過去5年間の合格率は、37~42%の間で推移しています。
乙種危険物取扱者試験の合格率
乙種危険物取扱者試験の合格率は以下のとおりです。
1類 | 2類 | 3類 | 4類 | 5類 | 6類 | ||
令和4年 | 申請者 | 7,979人 | 8,084人 | 9,777人 | 195,748人 | 9,987人 | 9,894人 |
受験者 | 7,619人 | 7,775人 | 9,382人 | 173,008人 | 9,589人 | 9,547人 | |
合格者 | 5,289人 | 5,360人 | 6,641人 | 54,391人 | 6,785人 | 6,661人 | |
合格率 | 69.4% | 68.9% | 70.8% | 31.4% | 70.8% | 69.8% | |
令和3年 | 申請者 | 9,091人 | 8,464人 | 10,711人 | 204,720人 | 10,512人 | 10,677人 |
受験者 | 8,730人 | 8,163人 | 10,293人 | 182,815人 | 10,087人 | 10,327人 | |
合格者 | 6,125人 | 5,864人 | 7,251人 | 65,732人 | 7,179人 | 7,249人 | |
合格率 | 70.2% | 71.8% | 70.4% | 36.0% | 71.2% | 70.2% | |
令和2年 | 申請者 | 9,517人 | 9,117人 | 11,034人 | 225,233人 | 10,815人 | 11,379人 |
受験者 | 9,190人 | 8,777人 | 10,612人 | 200,876人 | 10,393人 | 11,041人 | |
合格者 | 6,570人 | 6,217人 | 7,513人 | 77,466人 | 7,395人 | 7,560人 | |
合格率 | 71.5% | 70.8% | 70.8% | 38.6% | 71.2% | 68.5% | |
令和元年 | 申請者 | 11,912人 | 11,504人 | 13,084人 | 248,667人 | 13,375人 | 13,005人 |
受験者 | 11,465人 | 11,114人 | 12,535人 | 221,867人 | 12,862人 | 12,573人 | |
合格者 | 7,786人 | 7,618人 | 8,545人 | 85,669人 | 8,836人 | 8,421人 | |
合格率 | 67.9% | 68.5% | 68.2% | 38.6% | 68.7% | 67.0% | |
平成31年 | 申請者 | 12,777人 | 12,004人 | 13,541人 | 269,358人 | 13,827人 | 14,292人 |
受験者 | 12,333人 | 11,620人 | 13,045人 | 240,102人 | 13,362人 | 13,894人 | |
合格者 | 8,256人 | 7,936人 | 8,834人 | 93,667人 | 8,829人 | 8,949人 | |
合格率 | 66.9% | 68.3% | 67.7% | 39.0% | 66.1% | 64.4% |
類・2類・3類・5類・6類の合格率は60~70%台ですが、4類は30%台と低くなっています。4類の合格率が低いのは、4類の対象になっているのがガソリンや軽油、灯油など取り扱う事業者が多い危険物だからです。従業員に4類の取得を推奨する会社も多いため、会社から促されて準備不足のまま受験する人も少なくありません。そのため、受験者数が多く、合格率が低いという状況になっています。
丙種危険物取扱者試験の合格率
丙種危険物取扱者試験の合格率は以下のとおりです。
申請者 | 受験者 | 合格者 | 合格率 | |
令和4年 | 19,078人 | 17,857人 | 9,092人 | 50.9% |
令和3年 | 20,955人 | 19,747人 | 10,053人 | 50.9% |
令和2年 | 24,727人 | 23,484人 | 12,684人 | 54.0% |
令和元年 | 29,074人 | 27,523人 | 13,879人 | 50.4% |
平成31年 | 31,885人 | 30,028人 | 15,366人 | 51.2% |
合格率は例年50%台を推移しています。合格率だけを見ると乙種より低いですが、乙種より難易度が高いわけではありません。危険物取扱者資格のなかでは、もっとも易しく取得しやすいのが丙種です。
危険物取扱者の出題内容と難易度
危険物取扱者試験の難易度は甲種がもっとも高く、乙種、丙種の順に易しくなっています。
甲種危険物取扱者試験の出題内容と難易度
試験科目 | 出題数 |
危険物に関する法令 | 15問 |
物理学及び化学 | 10問 |
危険物の性質並びにその火災予防及び消火の方法 | 20問 |
甲種は、危険物のなかでも特に危険性が高い物質を扱う場合に必要な資格です。そのため、比較的高度な知識や技術が必要とされ、試験の難易度も高くなっています。特に「物理学及び化学」は大学レベルの内容が出題されるため、十分な対策が必要です。また、「危険物の性質並びにその火災予防及び消火の方法」は20問と、出題数が多くなっています。当然ですが、甲種はすべての危険物を取り扱うことができる資格なので、幅広い危険物に関する知識が求められます。
個人差はありますが、甲種に合格するために必要な勉強時間や勉強期間は以下が目安になります。
- 勉強時間:100~200時間程度
- 勉強期間:2~3ヶ月程度
乙種危険物取扱者試験の出題内容と難易度
試験科目 | 出題数 |
危険物に関する法令 | 15問 |
基礎的な物理学及び化学 | 10問 |
危険物の性質並びにその火災予防及び消火の方法 | 10問 |
乙種の試験は、一般的な危険物の取り扱いに関する知識が求められるため、甲種に比べ難易度は低くなっています。「物理学及び化学」も高校レベルの基礎的な内容が出題されます。とはいえ、簡単に取得できるレベルではありません。危険物の性質や特性、取り扱い方法、法令に関する知識や現場での安全対策、事故発生時の対応方法など幅広い知識が求められるため、十分な対策が必要です。
個人差はありますが、乙種に合格するために必要な勉強時間や勉強期間は以下が目安になります。
- 勉強時間:50~100時間程度
- 勉強期間:1~2ヶ月程度
丙種危険物取扱者試験の出題内容と難易度
試験科目 | 出題数 |
危険物に関する法令 | 10問 |
燃焼及び消火に関する基礎知識 | 5問 |
危険物の性質並びにその火災予防及び消火の方法 | 10問 |
丙種は取り扱う危険物が引火性液体の一部に限られるため、試験範囲が比較的狭く、そのぶん対策もしやすいと言えます。難易度は3つのなかでもっとも低く、高校在学中に合格する人も少なくありません。丙種に合格するためには、危険物の性質や特性、取り扱い方法、法令、現場での安全対策に関する基礎的な知識が求められます。
個人差はありますが、丙種に合格するために必要な勉強時間や勉強期間は以下が目安になります。
- 勉強時間:20~50時間程度
- 勉強期間:2週間~1ヶ月程度
危険物取扱者の科目免除について
危険物取扱者試験(乙種・丙種)は、一定の条件を満たしている受験者は科目免除を受けることができます。なお、甲種の試験では科目免除はありません。
乙種危険物取扱者試験の免除の条件
乙種危険物取扱者試験において次に該当する人は、試験科目の一部が免除されます。
免除資格者 | 免除種類 | 試験科目 | 免除 | 問題数 | 試験時間 |
乙種危険物取扱者免状を有する者 | 全類 | 1 法令 | 全部免除 | 0問 | 35分 |
2 物化 | 全部免除 | 0問 | |||
3 性消 | – | 10問 | |||
火薬類免状を有する者 | 1類 5類 | 1 法令 | – | 15問 | 1時間30分 |
2 物化 | 一部免除 | 4問 | |||
3 性消 | 一部免除 | 5問 | |||
乙種危険物取扱者免状を有し、かつ火薬類免状を有する科目免除申請者 | 1類 5類 | 1 法令 | 全部免除 | 0問 | 35分 |
2 物化 | 全部免除 | 0問 | |||
3 性消 | 一部免除 | 5問 |
丙種危険物取扱者試験の免除の条件
丙種危険物取扱者試験において次に該当する人は、試験科目の一部が免除されます。
免除資格者 | 試験科目 | 免除内容 | 問題数 | 試験時間 |
5年以上消防団員として勤務し、かつ、消防学校の教育訓練のうち基礎教育又は専科教育の警防科を修了した者 | 危険物に関する法令 | 免除なし | 10問 | 1時間 |
燃焼及び消化に関する基礎知識 | 全部免除 | 0問 | ||
危険物の性質並びにその火災予防及び消化の方法 | 免除なし | 10問 |
危険物取扱者資格はどの種を受験するのがおすすめ?
危険物取扱者資格の甲種、乙種、丙種、それぞれ取得するのがおすすめの人・ケースについてご説明します。
甲種がおすすめのケース
甲種危険物取扱者の資格は、危険物のなかでも特に危険性が高い物質を扱う場合に必要な資格です。そのため、以下のような職種や業界に従事する人におすすめです。
- 化学工場、石油化学プラント、ガス工場などの危険物を扱う施設で働く人
- 鉄道、道路、航空機、船舶などの運送業界で危険物を扱う人
- 港湾、空港、倉庫、物流業界で危険物を扱う人
甲種危険物取扱者の資格を持っていると、危険物の取り扱いに関する高度な知識・技術を身に付けていることの証明になるため、就職・転職で有利になります。上述のとおり、甲種の試験には受験資格がありますが、受験資格を満たしている方はぜひチャレンジしてみましょう。すべての危険物の取り扱いが可能になるので、将来のキャリアにおいても無駄になることはないでしょう。
乙種がおすすめのケース
乙種危険物取扱者の資格は、中程度の危険性の物質を扱う場合に必要な資格です。そのため、以下のような職種や業界に従事する人におすすめです。
- 化学工場、石油化学プラント、ガス工場などで働く人
- 運送業界で危険物を扱う人
- 港湾、空港、倉庫、物流業界で危険物を扱う人
- 医療機関、研究機関などで化学薬品を扱う人
- 農業、林業、建設業、清掃業、水道業などで化学物質を扱う人
乙種危険物取扱者の資格は会社で必要になる「類」を取得するのが一般的ですが、そのような事情がない人が乙種を目指す場合は、汎用性の高い「4類」から取得するのが良いでしょう。4類を取得すると、ガソリンや軽油、灯油など身近な危険物を扱えるようになります。ガソリンスタンドや化学工場の作業員、タンクローリーの運転手など実務で役立つ場面が多く、企業からも高いニーズがあるため、就職・転職でアドバンテージになるはずです。また、最終的に甲種を取得したいものの現段階で受験資格を満たしていない人は、乙種資格を4つ取得することで受験資格を得るのが近道になるでしょう。
丙種がおすすめのケース
危険物取扱者試験は乙種の受験者が多くいますが、乙種は決して簡単な試験ではありません。乙種試験の過去問やテキスト・参考書などを見て難しいと感じる人は、まずは丙種から挑戦するのが良いでしょう。丙種危険物取扱者の資格は、低危険性の物質を扱う場合に必要な資格です。資格を取得することで、低危険性の物質の取り扱い方法について基礎的な知識を習得することができ、作業環境の改善や安全確保に貢献することができます。そのため、以下のような職種や業界に従事する人におすすめです。
- 自動車整備士、鉄道車両整備士などでオイルや薬剤を扱う人
- 工務店、内装業者、建設業者などで塗料や接着剤を扱う人
- 製造業、卸売業、小売業で低危険性の物質を扱う人
まとめ
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