玉掛けとは?作業内容やつり方一覧、必要な資格などを徹底解説

2023年12月11日更新

玉掛けとは?作業内容やつり方一覧、必要な資格などを徹底解説

玉掛けとは、クレーンなどに荷を掛けたり外したりする作業のことを言います。クレーンを扱う工場や建築現場では欠かせない作業ですが、一歩間違えると危険な労働災害を招くおそれがあるため、玉掛け作業をできるのは有資格者に限定されています。今回は、玉掛けをする方法や玉掛けの資格、また玉掛作業者の需要や年収などについて解説していきます。

玉掛けとは?

玉掛け(たまかけ)とは、クレーンなどに荷を掛けたり外したりする作業のことです。クレーンや移動式クレーンで荷をつり上げる際に必要になる、「ワイヤーロープなどの用具を準備する」「フックへ用具を掛ける」「荷をつり上げる」「荷を移動させて所定の位置に置く」「フックから用具を取り外す」といった一連の作業が玉掛けと呼ばれています。

玉掛けのつり方一覧

一般社団法人日本クレーン協会における分類をもとに、玉掛けのつり方についてご説明します。

フックに掛ける方法

目掛け

つり荷のフックにワイヤーロープのアイを掛ける方法です。ワイヤーロープの数によって「1本づり」「2本づり」「3本づり」「4本づり」などがあります。標準的で安全な掛け方ですが、非対象のつり荷には向きません。

半掛け

アイの部分をフックに掛けない方法で、もっともシンプルな掛け方です。ワイヤーロープの数によって「2本づり」「4本づり」「6本づり」などがあります。荷につり手が付いている場合や、定型的な荷の玉掛けに適していますが、重心が中心にない荷や重心位置が高い荷には適しません。

あだ巻き掛け

フックにワイヤーロープを1回巻きつけて掛ける方法です。ワイヤーロープが滑るのを防止できるのが最大のメリットですが、ワイヤーロープに癖が付きやすく、太いワイヤーロープには適しません。

肩掛け

フックの肩の部分にワイヤーロープを巻き付けて掛ける方法です。あだ巻き掛けのワイヤーロープの巻付け位置をフックの肩部分に移すと、肩掛けの形になります。あだ巻き掛けに比べワイヤーロープに癖が付きにくいため、比較的太いワイヤーロープにも使えます。

つり荷に掛ける方法

目掛け

つり荷のつり手などに、ワイヤーロープのアイを掛ける方法です。つり荷につり手などがあることが前提になりますが、製品や設備などに適用できれば効果的です。

半掛け

ワイヤーロープを荷に回して掛ける方法です。シンプルな掛け方で多く用いられますが、つり角度が大きくなるとワイヤーロープが互いに引き寄せられて不安定になります。

目通し(絞り)

ワイヤーロープのアイに反対側のアイ、もしくは二つ折りにした部分を通して、つり荷を絞り込むように掛ける方法です。荷が絞りこまれることによって生まれる摩擦力で、つり荷とワイヤーロープの滑りを防止します。

あだ巻き掛け

荷にワイヤーロープを1回巻きつけて掛ける方法です。つり角度によって引き寄せられようとするワイヤーロープの滑りを防止するのに効果的で、特に長尺物には有効な掛け方です。

あや掛け

2本のワイヤーロープを荷の底面で交差させて掛ける方法で、円盤形状のつり荷に最適な掛け方です。ワイヤーロープの長さが少々異なっていても張力がほぼ均等になりますが、重心の高い円柱状・円錐状のつり荷は不安定になることがあります。

専用の玉掛用具を使って玉掛けする方法

クランプ

クランプは、つり荷を挟んで持ち上げるための用具で、つり荷に金具やアイを引っ掛けるところがない場合に必要になります。主に、鋼板や鉄骨をつり上げるために使われます。

ハッカー

ハッカーは、2本の爪をつり荷の水平面に引っ掛けてつり上げるための用具で、クランプと同様に、つり荷に金具やアイを引っ掛けるところがない場合に必要になります。

つりビーム

つりビームは、つり荷にワイヤーロープを垂直に掛ける必要がある場合や、太いワイヤーロープを角度をつけて掛けることが困難な場合、長尺物で2点づりが困難な場合などに使われる用具です。

※参考:一般社団法人日本クレーン協会

収入アップを求めた転職時のポイント!

資格や実務経験があればよりお仕事選びがしやすくなりますが、未経験の場合でも採用をする職場も多く存在します。
ジョブ派遣で紹介しているお仕事には独自の研修システムを設けられているため、未経験者であっても大手メーカーで勤務することが可能です。資格の取得が難しい場合でも収入が上げられることもあります。
>>すぐに多くの給料が見込める?未経験でも高収入な求人を見てみる

玉掛け作業は事故に注意!

大きくて重量のあるつり荷を扱う玉掛け作業では、安全管理を徹底していないと重大な事故を招くおそれがあります。たとえば、ワイヤーロープが劣化していることに気付かないまま使っていたり、適切なワイヤーロープを選択できなかったりすると、玉掛け作業中にワイヤーロープが切れたり外れたりして、つり荷が落下する可能性があります。下に人がいたら大惨事は免れないでしょう。

玉掛け作業における死亡災害(平成21~30年)の発生状況は以下のとおりです。つり荷の落下による死亡災害が多いことが分かります。

(1)ワイヤーロープ等からつり荷が外れたことによるもの:62件
(2)ワイヤーロープ等の切断によるもの:23件
(3)フックからワイヤーロープが外れたことによるもの:19件
(4)フックからつり荷が外れたことによるもの:19件
(5)巻き上げワイヤーロープ等の切断によるもの:6件

※参考:クレーン年鑑、クレーン等による現象別・機種別死亡災害発生状況

玉掛け作業の事故防止のポイントとは?

玉掛け作業による事故を防止するためには、玉掛作業者はもちろんのこと、クレーンの運転者や合図者など、玉掛けに関わるすべての人が注意を払って作業に臨まなければいけません。そのために徹底したいのが、「玉掛け作業の安全に係るガイドライン」です。玉掛け作業の安全に係るガイドラインでは、以下のとおり、玉掛け作業に関わる人の基本的な作業分担や、作業の実施に際しての留意事項がまとめられています。

玉掛け作業責任者が実施する事項

(1)つり荷の質量等が事業者から指示されたものであるかを確認するとともに、玉掛用具の種類等が適切であることを確認しましょう。
(2)クレーン等の据付状況、および運搬経路を含む作業範囲内の状況を確認しましょう。
(3)玉掛けの方法が適切であることを確認しましょう。
(4)つり荷の落下のおそれ等、不安全な状況を認知した場合は直ちにクレーン等の運転者に指示して作業を中断し、つり荷を着地させる等の措置を講じましょう。

玉掛作業者が実施する事項

(1)玉掛け作業に使用する玉掛用具を準備するとともに、その玉掛用具について使用前の点検をおこないましょう。
(2)つり荷の質量、および形状が指示されたものであるかを確認するとともに、用意された玉掛用具で安全に作業がおこなえることを確認しましょう。
(3)玉掛けにあたっては、つり荷の重心を見極め、打合せで指示された方法で玉掛けをおこない、安全な位置に退避したうえで合図者に合図をおこないましょう。
(4)地切り時につり荷の状況を確認しましょう。
(5)荷受けをおこなう際には、つり荷の着地場所の状況を確認し、打合せで指示されたまくら、歯止め等を配置する等、荷が安定するための措置を講じましょう。
(6)玉掛用具の取り外しは、着地したつり荷の安定を確認したうえでおこないましょう。

合図者が実施する事項

(1)クレーン等運転者、および玉掛作業者を視認できる場所に位置するようにしましょう。
(2)玉掛作業者から合図を受けた際は、関係労働者の退避状況と運搬経路に第三者がいないことを確認したうえで、クレーン等運転者に合図しましょう。
(3)常につり荷を確認し、つり荷の下に労働者が立ち入っていないこと等、運搬経路の状況を確認しながらつり荷を誘導しましょう。
(4)つり荷が不安定になった場合は、直ちにクレーン等運転者に合図をおこない、作業を中断する等の措置を講じましょう。
(5)つり荷を着地させるときは、つり荷の着地場所の状況、および玉掛作業者の待機位置を確認したうえでおこないましょう。

クレーン等運転者が実施する事項

(1)作業開始前に使用するクレーン等に係る点検をおこないましょう。
(2)移動式クレーンを使用する場合は、据付地盤の状況を確認して打合せ時の指示に基づいて据え付けましょう。
(3)運搬経路を含む作業範囲の状況を確認しましょう。
(4)つり荷の下に労働者が立ち入った場合は、直ちにクレーン操作を中断するとともに、その労働者に退避を指示しましょう。
(5)つり荷の運搬中に定格荷重を超えるおそれが生じた場合は、直ちにクレーン操作を中断して、玉掛け作業責任者にその旨を連絡しましょう。

※参考:玉掛け作業の安全に係るガイドライン


玉掛け作業をおこなうためには資格が必要!

安全に玉掛け作業をおこなうためには、クレーンなどの種類、特徴、構造、機能、安全装置などに関する理解が不可欠です。そのため、玉掛け作業をおこなう人には、「玉掛け特別教育」もしくは「玉掛け技能講習」を受講が義務付けられています。

「玉掛け特別教育」と「玉掛け技能講習」の違いは、つり上げ荷重です。つり上げ荷重が「1トン未満」の玉掛けをする場合は「玉掛け特別教育」の受講でOKですが、つり上げ荷重が「1トン以上」の玉掛けをする場合は「玉掛け技能講習」の受講が必要になります。

玉掛け特別教育(つり上げ荷重1トン未満の玉掛け)

クレーンなどのつり上げ荷重が1トン未満の玉掛け業務をおこなうためには、玉掛け特別教育の受講が必要になります。

受講資格

満18歳以上の人

講習内容

5時間の学科講習と4時間の実技講習、計9時間の講習を2日に分けて受講します。

【学科講習】

  • クレーンに関する知識:1時間
  • 玉掛けに必要な力学に関する知識:1時間
  • 玉掛けの方法:2時間・関係法令:1時間

【実技講習】

  • クレーン等の玉掛け:3時間
  • クレーン等の運転のための合図:1時間

玉掛け技能講習(つり上げ荷重1トン以上の玉掛け)

クレーンなどのつり上げ荷重が1トン以上の玉掛け業務をおこなうためには、玉掛け技能講習の受講が必要になります。玉掛け技能講習には「Aコース」と「Bコース」があり、特定の資格を有している人は一部の講習が免除されるBコースを選択することができます。

受講資格

満18歳以上の人。なお、Bコースを受講するには、下記のいずれかの資格を有している必要があります。

  • 移動式クレーン運転士免許
  • クレーン・デリック運転士免許(旧クレーン運転士免許、旧デリック運転士免許含む)
  • 揚荷装置運転士免許
  • 床上操作式クレーン運転技能講習修了者
  • 小型移動式クレーン運転技能講習修了者

講習内容

学科講習と実技講習に分かれており、通常は3日に分けて受講します。また、講習後に修了試験がおこなわれます。

【学科講習】

  • クレーン等に関する知識:1時間
  • クレーン等の玉掛けの方法:7時間
  • クレーン等の力学に関する知識:3時間(Bコース受講者は免除)
  • 関係法令:1時間・学科修了試験(筆記):規定時間
  • クレーン等の運転のための合図:1時間(Bコース受講者は免除)

【実技講習】

  • クレーン等の玉掛けの作業:6時間
  • 実技修了試験(実技):規定時間

玉掛けの資格を取得するための勉強方法とは?

玉掛け特別教育も、玉掛け技能講習も、合格率は100%に近いと言われています。玉掛けに関する知識があるに越したことはありませんが、事前に勉強して臨まなくてもほぼ確実に修了・合格できるはずです。それでも不安だという方は、書籍などで勉強しておくのが良いでしょう。おすすめの書籍は『玉掛け作業者安全必携 – 技能講習・特別教育用テキスト』(中央労働災害防止協会)です。

玉掛作業者の需要とは?

玉掛け作業は、製造や建築などクレーンを使う現場では必ずニーズが発生する仕事です。特に近年、製造業界や建築業界は人手不足が深刻になっており、ベテランの玉掛作業者が減少する一方で、若手が入職しないという悪循環に陥っています。このような現状があるため、今後も玉掛作業者は安定した需要が見込めるでしょう。

参考までに、求人情報専門検索エンジンの「Indeed(2022年12月2日閲覧)」によると、「玉掛け」の求人件数は全国で255,819件、24時間以内では70,474件となっています。また、カカクコムが運営する求人に特化した検索エンジン「求人ボックス(2022年12月2日閲覧)」によると、「玉掛け」の求人件数は全国で131,969件、24時間以内では13,471件となっています。

玉掛作業者の年収・月収とは?

厚生労働省の「賃金構造基本統計調査(2021年)」によると、玉掛作業者の年収・月収は以下のようになっています。

玉掛作業者(男性)

  • 平均年収:434.3万円
  • 平均月収:30.2万円
  • 平均時給:1,673円

玉掛作業者(女性)

  • 平均年収:344.4万円
  • 平均月収:23.7万円
  • 平均時給:1,340円
収入アップを求めた転職時のポイント!

玉掛の資格は活用の場が広く存在し、転職の際には大きなアドバンテージになります。
資格が無い場合よりも高収入のお仕事に就きやすくなるでしょう。
収入を上げるためには、給与の高いお仕事を探すのも良いですが、寮ありのお仕事の場合には生活にかかる資金がグッと削減されるので、生活スタイルに応じたオプションで探してみることもオススメです。
>> 赴任費支給&家具家電付き寮完備のフォークリフトの求人一覧

ジョブ派遣なら玉掛けの工場派遣求人もご紹介可能!

玉掛けをはじめとする工場派遣の仕事を探すなら、ぜひ「ジョブ派遣」をご活用ください。ジョブ派遣は、派遣会社(株式会社日輪)が運営している求人サイトで、製造業・派遣社員のお仕事を中心にご紹介しています。応募時から入社後のサポートまで、スピーディ&丁寧な対応をお約束します。

まとめ

玉掛けの資格を持っているだけではクレーンの運転はできません。逆に、クレーン運転の資格を持っていても、荷をクレーンのフックに掛ける作業はできません。工場などでクレーン業務に携わりたい方は、クレーン運転の資格と玉掛けの資格をセットで取得するのが良いでしょう。玉掛け技能講習を修了すれば、小型移動式クレーンや床上運転式クレーンの受講が一部免除されるため、まずは玉掛け技能講習からスタートしてみてはいかがでしょうか。

玉掛けの資格に加えてクレーン運転の資格を保有していれば、工場での仕事を探しやすくなります。また、派遣社員として働いている人は、これらの資格を取得することで正社員登用への道が開け、長期雇用や給与アップも期待できるようになります。クレーンや移動式クレーンの運転に必要な資格をまとめておきますので、ぜひチャレンジしてみましょう。

【クレーンの運転に必要な資格】

・つり上げ荷重が5トン以上クレーン・デリック運転士免許(限定なし) クレーン・デリック運転士免許(クレーン限定)
・つり上げ荷重が5トン以上の床上運転式クレーン・デリック運転士免許(床上運転式クレーン限定)
・つり上げ荷重が5トン以上の床上操作式床上操作式クレーン運転技能講習
・つり上げ荷重が5トン未満 ・つり上げ荷重が5トン以上の跨線テルハクレーンの運転の業務特別教育

【移動式クレーンの運転に必要な資格】

・つり上げ荷重が5トン以上移動式クレーン運転士免許
・つり上げ荷重が1トン以上5トン未満小型移動式クレーン運転技能講習
・つり上げ荷重が1トン未満移動式クレーンの運転の業務特別教育
banner banner
この記事を読んだ方に
\オススメの求人はこちら/
                                                                                                                       求人情報をもっと見る