無期雇用派遣は派遣先が選べない?メリット・デメリットと対処法
2025年5月20日更新

「無期雇用派遣に転換したら、派遣先を選べなくなるの?」という疑問を持つ方は多いのではないでしょうか。無期雇用派遣は雇用の安定という大きなメリットがある一方で、派遣先の選択に制限がかかることが懸念されています。本記事では、無期雇用派遣の仕組み、派遣先選択の実態、メリット・デメリット、そして派遣先を断る方法や対処法まで、働く人の立場に立って徹底解説します。
無期雇用派遣とは?基本的な仕組みと特徴
無期雇用派遣の定義と法的位置づけ
無期雇用派遣とは、派遣会社と期間の定めのない雇用契約を結び、派遣先企業で働く形態のことです。2015年の労働者派遣法改正によって制度化され、派遣社員の雇用の安定を図るために導入されました。
従来の派遣(有期雇用派遣・登録型派遣)では、特定の派遣先での就業期間のみ雇用契約が結ばれていましたが、無期雇用派遣では派遣会社との雇用関係が継続的に維持されます。つまり、派遣先での就業が終了しても、派遣会社との雇用契約は継続するのが特徴です。
有期雇用派遣との違い
無期雇用派遣と有期雇用派遣には、以下のような主な違いがあります:
項目無期雇用派遣有期雇用派遣雇用契約期間の定めなし期間を定めて契約給与形態月給制が一般的時給制が一般的待機期間給与または休業手当の支給あり給与支払いなし派遣先選択制限あり(会社の配属指示)自由に選べる勤務地・職種指定される場合あり自分で選べる同一派遣先での勤務3年以上可能最長3年まで
有期雇用派遣では派遣先での就業期間や条件を自分で選択できる自由がある反面、派遣先が見つからない期間は収入がないというリスクがあります。一方、無期雇用派遣は安定した雇用と収入が保証されますが、自分の希望と異なる派遣先で働かなければならないリスクが生じます。
無期雇用派遣が増えている背景
無期雇用派遣が増えている主な背景には以下の要因があります:
- 法改正の影響:2015年の労働者派遣法改正により、派遣元事業主(派遣会社)には、同一組織での派遣就業が3年を超える派遣労働者に対して、派遣先への直接雇用の依頼や、新たな派遣先の提供、無期雇用への転換などの「雇用安定措置」を講じることが義務付けられました。
- 労働契約法の影響:2013年の労働契約法改正で導入された「無期転換ルール」により、有期契約が通算5年を超えると、労働者の申込みによって無期契約に転換できるようになりました。2018年以降、この無期転換の申込権を得る派遣社員が増加しています。
- 雇用の安定志向:雇用不安や景気変動の中で、安定した雇用を求める労働者のニーズが高まっています。
この結果、多くの派遣会社が無期雇用派遣を導入し、派遣社員に提案するようになりました。
無期雇用派遣と派遣先選択の権利
派遣先選択の実態と制限
無期雇用派遣になると、派遣先を自由に選べなくなるという認識は、ある程度正確です。無期雇用派遣では、派遣会社が紹介する派遣先で就業することが基本となります。
これは、派遣会社が無期雇用派遣社員に対して給与を支払う義務があるため、できるだけ待機期間を短くしようとすることが理由の一つです。また、無期雇用契約における業務命令として派遣先が決定されるため、正当な理由なく断ることは難しくなります。
しかし、実態としては派遣会社によって対応は大きく異なります。派遣社員の希望や適性を考慮し、複数の選択肢を提示する派遣会社もあれば、ほとんど選択権を認めない派遣会社もあります。
法律上の派遣先選択の権利
法律上、派遣社員には派遣先を断る権利が存在します。労働基準法では、労働者の意に反する不利益な労働条件の変更は認められていないためです。特に以下のような場合は、正当な理由があると考えられます:
- 通勤が著しく困難になる場合(通勤時間が大幅に増加するなど)
- 家族の介護や育児の事情がある場合
- 健康上の理由がある場合
- 派遣先の業務内容が、自分のスキルや経験と著しくかけ離れている場合
- ハラスメントやその他の問題がある職場である場合
ただし、無期雇用派遣の契約時に「会社が指定する勤務地・職種で勤務する」といった条項に同意している場合は、断ることが難しくなる場合があります。
派遣会社によって異なる派遣先選択の自由度
派遣会社によって、派遣先選択の自由度には大きな差があります:
柔軟な派遣会社:
- 派遣社員の希望や適性を考慮
- 複数の選択肢を提示
- 断る権利を実質的に認める
- キャリア形成を支援する姿勢
厳格な派遣会社:
- 会社の都合を優先
- 一方的に派遣先を決定
- 断ると「就業の意思なし」と判断される場合も
- 給与補償なしの待機や退職勧奨のリスク
このような差があるため、無期雇用派遣への転換や契約を検討する際は、派遣会社の方針や対応をよく確認することが重要です。
無期雇用派遣のメリットとデメリット
メリット:雇用安定性、福利厚生、キャリア形成
無期雇用派遣の主なメリットは以下の通りです:
- 雇用の安定性
- 期間の定めのない雇用契約
- 待機期間中も給与または休業手当が支給
- 派遣先がなくなっても即解雇されない
- 福利厚生の充実
- 社会保険の完備
- 有給休暇の取得がしやすい
- 派遣会社独自の福利厚生(住宅手当、家族手当など)
- 賞与や退職金制度がある場合も
- キャリア形成のサポート
- 長期的なキャリア計画の立案支援
- スキルアップのための研修制度
- 同じ派遣先で長期的に働ける可能性
- 正社員登用の道が開かれやすい
このように、無期雇用派遣は特に雇用の安定を重視する方や、長期的なキャリア形成を目指す方にとって魅力的な働き方といえます。
デメリット:派遣先断りにくさ、勤務地変更リスク、給与の不安定さ
一方で、無期雇用派遣には以下のようなデメリットも存在します:
- 派遣先を断りにくい
- 派遣会社の指示に従う義務がある
- 断ると「就業の意思なし」と判断されるリスク
- 希望と異なる職場で働かされる可能性
- 勤務地や職種の変更リスク
- 突然の勤務地変更の可能性
- 転居を伴う転勤が発生するケースも
- 希望と異なる職種への配属リスク
- 給与面での不安定さ
- 待機期間中は基本給のみ(残業代なし)
- 休業手当は通常給与の60%程度
- 派遣先によって労働条件が変わる可能性
- スキルの偏りが生じる可能性
- 派遣会社の持つ案件に限定される
- 希望するキャリア形成ができない場合も
- 市場価値の高いスキルを身につけにくい
これらのデメリットは、特に働く場所や職種を自分で選びたい方や、特定の分野でのキャリアアップを目指す方にとって大きな障壁となり得ます。
派遣先を断る方法と対処法
合理的な理由での断り方
派遣先を断る場合は、感情的にならず、合理的な理由を明確に伝えることが重要です:
- 健康上の理由
- 持病や身体的制限と業務内容の関係
- 医師の診断書があるとより説得力が増す
- 家庭の事情
- 育児や介護の責任
- 家族の健康問題
- 通勤困難
- 片道の通勤時間が著しく長い
- 公共交通機関の利用が困難
- スキルミスマッチ
- 業務内容と自分のスキル・経験の乖離
- トレーニングがあっても対応困難な専門性
断る際は、単に「行きたくない」ではなく、具体的な理由と、可能であれば代替案(「このエリアであれば通勤可能」「こういった職種であれば対応できる」など)を提示すると良いでしょう。
派遣会社との事前交渉の重要性
派遣先を断る可能性を減らすためには、事前の交渉が重要です:
- 契約前の条件明確化
- 希望する勤務地域の範囲
- 希望する職種や業務内容
- 勤務時間や休日の条件
- 定期的なキャリア面談
- 自分の希望や課題を伝える機会を持つ
- キャリアプランを派遣会社と共有
- 無期転換前の条件交渉
- 有期から無期への転換時に条件を明確化
- 可能であれば書面で確認
これらの交渉を通じて、派遣会社との信頼関係を構築し、自分の希望や条件を理解してもらうことが重要です。
断る権利を守るための法的知識
派遣先を断る権利を守るために、以下の法的知識を持っておくと良いでしょう:
- 労働契約法
- 労働条件の不利益変更の制限
- 合理的な理由なく労働条件を変更できない
- 労働者派遣法
- 派遣労働者の保護規定
- 派遣会社の義務(キャリア形成支援など)
- 労働基準法
- 労働者の権利保護
- 不当な取り扱いの禁止
法的知識があれば、不当な扱いを受けた場合に適切に対応できます。必要に応じて労働局の総合労働相談コーナーや弁護士に相談することも検討しましょう。
派遣先が決まらない場合の実態と対応
待機期間中の給与保障
派遣先が決まらず、待機状態になった場合の給与保障は以下のようになります:
- 休業手当
- 労働基準法第26条に基づく
- 平均賃金の60%以上
- 派遣会社の責任で仕事がない場合に支払われる
- 基本給のみの支給
- 契約によっては基本給のみが支給される場合も
- 残業代や各種手当はなし
- 派遣会社独自の待機手当
- 派遣会社によっては独自の待機手当を設定
- 契約内容を確認することが重要
なお、「就業の意思がない」と判断された場合(合理的な理由なく派遣先を断り続けるなど)は、休業手当が支払われないこともあります。
派遣先が決まらない理由と対処法
派遣先が決まらない主な理由と対処法は以下の通りです:
主な理由:
- スキルや経験と市場ニーズのミスマッチ
- 派遣会社の案件不足
- 勤務地や条件の制限が厳しい
- 景気動向や季節変動
対処法:
- スキルアップ
- 派遣会社提供の研修を活用
- 自己啓発での資格取得や学習
- 条件の柔軟化
- 勤務地や職種の範囲を広げる
- 短期案件でも積極的に受ける
- 派遣会社との交渉
- 定期的に状況を確認
- より積極的な案件紹介を依頼
- 複数の派遣会社に登録
- 無期雇用派遣の転換を検討中の場合
待機期間が長期化する場合は、派遣会社との話し合いを通じて、今後の見通しや対策を検討することが重要です。
雇止めリスクと法的保護
無期雇用派遣であっても、完全に雇止めのリスクがないわけではありません:
- 懲戒解雇の可能性
- 職務命令違反(正当な理由なく派遣先を断り続けるなど)
- 就業規則違反
- 整理解雇の可能性
- 派遣会社の経営悪化
- 事業縮小や廃業
- 合意解約の勧奨
- 退職勧奨が行われるケース
- 自主退職を促される圧力
ただし、無期雇用契約の場合、「客観的に合理的な理由」と「社会通念上の相当性」がなければ解雇は無効とされます(労働契約法第16条)。不当な解雇の場合は、労働局や労働組合、弁護士に相談することをお勧めします。
無期雇用派遣の適性とキャリアパス
向いている人・向いていない人の特徴
無期雇用派遣に向いている人の特徴:
- 雇用の安定を最優先する人
- 長期的な視点でキャリアを考えられる人
- 環境適応力がある人
- 様々な職場や業務を経験したい人
- 派遣会社のサポートを積極的に活用できる人
無期雇用派遣に向いていない人の特徴:
- 働く場所や条件を自分で決めたい人
- 特定の業界や職種でのキャリアを重視する人
- 短期集中型の働き方を好む人
- 高収入を最優先する人
- 将来的に独立を考えている人
自分の価値観やキャリアプランに照らし合わせて、無期雇用派遣が自分に合っているかを見極めることが大切です。
無期雇用派遣から正社員を目指す方法
無期雇用派遣から正社員を目指す主な方法は以下の通りです:
- 派遣先企業での直接雇用
- 良好な実績を残す
- 派遣先の採用ニーズを把握
- 直接雇用の意思を伝える
- 派遣会社の正社員になる
- 派遣社員としての実績を上げる
- 内部公募への応募
- 派遣会社内でのキャリアパスを確認
- 他社への転職
- 派遣先での経験をアピールポイントに
- 派遣期間中にスキルアップ
- 業界知識や人脈を活かす
正社員を目指す場合は、計画的なスキルアップと人脈形成、そして積極的なアピールが重要です。
キャリアアップのための戦略
無期雇用派遣でキャリアアップするための戦略:
- スキル獲得計画
- 市場価値の高いスキルを特定
- 派遣会社の研修制度を活用
- 自己投資での学習・資格取得
- 派遣先選択の戦略化
- キャリアに有利な派遣先を希望
- 関連する業界や職種での経験を蓄積
- スキルの横展開ができる案件を選ぶ
- 実績の可視化
- 業務成果の数値化
- 具体的な成功事例の記録
- 派遣先からの評価を得る
- 人脈形成
- 派遣先での良好な関係構築
- 業界内のネットワーク拡大
- 派遣会社内での信頼関係構築
計画的にキャリアを形成することで、無期雇用派遣でも着実にステップアップすることが可能です。
安心して働くためのポイントとFAQ
派遣会社選びと契約前の確認事項
無期雇用派遣で安心して働くためには、派遣会社選びが非常に重要です:
確認すべきポイント:
- 派遣先選択の柔軟性
- 希望条件の考慮度合い
- 断った場合の対応方針
- 待機中の処遇
- 休業手当の実績
- 待機期間の活用方法(研修など)
- キャリア支援体制
- 研修制度の充実度
- キャリアコンサルティングの有無
- 雇用実績
- 無期雇用派遣の平均就業期間
- 派遣社員の定着率
- 契約内容
- 勤務地・職種の範囲
- 基本給と各種手当の仕組み
- 派遣先断りに関する規定
これらの情報を契約前にしっかり確認し、書面で残しておくことが重要です。
よくある質問への回答
Q: 無期雇用派遣を辞めるには?
A: 一般的な正社員と同様に、就業規則に定められた退職手続きに従って辞めることができます。通常は1〜2ヶ月前の退職届提出が必要です。ただし、派遣会社によっては引き止めがあるケースもあるため、退職理由を明確にし、円満に退職できるよう計画的に進めることが大切です。
Q: 給料は上がるの?
A: 派遣会社によって異なりますが、多くの場合、定期昇給制度や評価制度が設けられています。ただし、登録型派遣のように派遣先ごとに時給交渉をするのではなく、派遣会社の昇給ルールに従うことになります。キャリアアップやスキル向上によって給料アップを目指すことが重要です。
Q: 無期雇用派遣でも派遣先の正社員になれる?
A: 可能性はあります。特に、派遣先企業が人材を探している場合や、あなたの能力が高く評価されている場合は、直接雇用の打診があるかもしれません。ただし、派遣会社によっては直接雇用に一定の制限を設けている場合もあるため、契約内容を確認しておくことが必要です。
Q: 契約書の内容は変更できる?
A: 基本的には可能ですが、派遣会社との交渉力に左右されます。特に無期雇用派遣への転換時や更新時は、勤務条件について交渉するチャンスです。重要な条件(勤務地域の範囲、職種の範囲など)は書面で確認しておくと良いでしょう。ただし、一度合意した内容を後から大幅に変更するのは難しい場合が多いです。
自己防衛のための記録と面談活用法
無期雇用派遣で自己防衛するためのポイント:
- 記録の取り方
- メールや文書でのやり取りを保存
- 口頭での約束は後でメールで確認
- 業務実績や評価のエビデンスを残す
- 定期面談の活用
- 自分の希望や懸念を明確に伝える
- キャリアプランを積極的に提案
- 具体的な目標設定と進捗確認
- 情報収集
- 派遣会社や派遣先の動向を把握
- 業界全体の求人状況を定期的にチェック
- 他の派遣社員との情報交換
これらの対策を講じることで、無期雇用派遣でもより安心して働くことができます。
まとめ:自分に合った働き方を見つけるために
無期雇用派遣は、雇用の安定というメリットがある一方、派遣先選択の自由が制限されるというデメリットもあります。派遣先を断る権利は法的に保証されていますが、実際には派遣会社の方針や契約内容によって大きく左右されるのが現実です。
自分に合った働き方を見つけるためのポイント:
- 自分の優先順位を明確にする
- 雇用の安定 vs 働く場所の選択自由
- 収入の安定 vs 高収入の可能性
- キャリア形成 vs 働き方の柔軟性
- 派遣会社の選定を慎重に
- 派遣先選択における柔軟性
- 待機期間中の対応
- キャリア支援体制
- 契約内容の確認と交渉
- 勤務地・職種の範囲
- 派遣先断りに関する条件
- 給与体系や昇給制度
- 定期的なキャリア見直し
- 自分のスキルと市場価値の確認
- 無期雇用派遣で得られるものの評価
- 次のステップの検討
無期雇用派遣は、すべての人にとって理想的な働き方ではありませんが、状況やニーズによっては大きなメリットをもたらす選択肢となります。自分の価値観やキャリアプランに照らし合わせて、慎重に判断することが大切です。
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