自動車工場の仕組みと仕事内容について　メリット・デメリットを解説

2023年12月11日更新

自動車産業は日本を代表する産業の一つです。トヨタ、日産、ホンダ、スズキ、マツダ、SUBARUなど、日本には世界的な自動車メーカーも多くあり、各社の自動車工場では常に安定した求人ニーズがあります。今回は、自動車工場で働くことをお考えの方に向け、自動車工場の仕事内容やメリット・デメリットなどをお伝えしていきます。

自動車工場での生産の流れ
自動車工場の勤務体制
自動車工場の仕事内容
自動車工場で働くメリット
自動車工場で働くデメリット
自動車工場の職場環境・労働環境
まとめ

自動車工場での生産の流れ

自動車工場での仕事内容を理解する前提として、自動車が生産される流れを押さえておきましょう。自動車は一般的に、以下のような工程で製造されています。

①プレス
自動車の骨格となるボディをつくる工程です。鉄板を切断し、プレス加工によって床板やルーフ、ボンネットやドアなどの各パーツを成形していきます。

②溶接
プレス加工された各パーツを溶接によって接合します。

③塗装
自動車を美しく仕上げるために塗装をおこないます。

④艤装（ぎそう）組み立て
ヘッドライトやメーターなど、自動車の運転に欠かせないパーツを取り付けます。

⑤組み立て
エンジンなどの主要なパーツをつくる工程です。溶かした鉄を型に流し込んでエンジンの原型をつくります（鋳造：ちゅうぞう）。また、鉄をプレスして、エンジン回りや足回りのパーツをつくります（鍛造：たんぞう）。鋳造・鍛造したパーツを加工して、エンジンを組み立てます。

⑥エンジン組み付け
エンジンを自動車のボディに組み付けます。

⑦最終組み立て
足回りの部品やハンドル、シートなどを取り付けます。

⑧検査
ブレーキや排ガス、水漏れなど、1,000項目以上にわたる検査をおこないます。

自動車工場の勤務体制

生産ラインを効率良く稼働させるため、自動車工場の従業員は昼間と夜間の2交替制、もしくは、早番・遅番・夜勤の3交替制で働いています。工場によって違いはありますが、2交替制の場合、昼間は朝8時から17時半くらいまで、夜間は20時から翌朝5時半くらいまでの勤務になります。3交替制の場合は、朝7時から15時くらい、15時から23時くらい、23時から翌朝7時くらい、という勤務体制が一般的です。

自動車工場の仕事内容

自動車工場における代表的な仕事内容についてご説明します。

溶接

溶接は、プレス工程で成形されたパーツを熱によって接合する作業です。最初にインナーパネルを溶接し、次にアウターパネルを溶接し、最後にドアなどのパーツを溶接するのが一般的な流れです。フレーム部分の溶接はほとんどロボット・機械によっておこなわれますが、比較的細かいパーツは作業者が自らの手で溶接します。また、ロボットが正常に稼働しているかどうかをチェックするのも作業者の重要な仕事です。

溶接には様々な方法がありますが、もっとも一般的なのはアーク溶接です。アーク溶接をおこなうには、アーク溶接作業者の資格が必要になります。アーク溶接やアーク溶接作業者の資格に関しては、以下の記事で詳しく解説しています。

>>アーク溶接資格の取り方は？種類や条件、費用や難易度などを解説-ジョブ派遣

塗装

塗装は文字どおり、車体に色を付ける作業です。塗装工程の多くはロボット・機械によって自動的におこなわれますが、機械が塗装できない箇所は作業者が塗装をします。自動車の塗装は、以下のように何重にも重ね塗りをして仕上げていきます。

電着塗装による下塗り
シーラー塗装（鋼板のつなぎ目や隙間への塗装）
本塗り（中塗り・ベースカラー塗装・クリア塗装の3工程でおこなうのが一般的）

組立

組み立ては、車体にパーツを取り付けて組み立てていく工程で、人の手によっておこなわれる作業が多くあります。基本的にはライン作業なので、自分が担当するパーツを車体に次々と取り付けていきます。エンジンなど、重量のあるパーツや大型のパーツは複数人で組み立てをおこないます。

検査

検査は、各種パーツや完成した自動車の仕上がりを確認する作業です。「きちんと溶接されているか？」「塗装にムラはないか？」「車体にキズや汚れはないか？」など、膨大なチェック項目に沿って細かく確認していきます。目視による検査だけでなく、実際に操作をして「問題なく走行できるか？」「ドアの開閉はスムーズにできるか？」「ライトやウインカーは点くか？」といったことを検査する工程もあります。

自動車工場で働くメリット

自動車工場で働くメリットとしてよく言われるのが以下の4点です。

自動車工場は比較的給料が高い

自動車メーカーのほとんどは大企業で経営が安定しているため、自動車工場の給料も比較的高い水準にあります。正社員の月給・年収も高いですし、アルバイトや派遣社員の時給も他の工場より高い傾向にあります。

求人情報専門検索エンジンのIndeed（インディード）によると、日本での自動車製造の平均給与は以下のとおりです。

時給：1,483円
月給：299,118円
年収：4,224,734円

また、自動車製造の給与（時給）が高い都市・エリアは以下のとおりです。

愛知県刈谷市：1,813円
愛知県豊橋市：1,769円
愛知県岡崎市：1,731円
岐阜県各務原市：1,706円
愛知県豊田市：1,680円
福岡県京都郡苅田町：1,516円

※参考：日本での自動車製造の平均給与｜求人情報専門検索エンジンindeed（2022年12月26日現在）

自動車工場は福利厚生が充実している

自動車メーカーの多くは日本を代表する大企業であり、充実した福利厚生制度を導入しています。そのため、自動車工場で働く人も充実した福利厚生を受けることができます。自動車工場の代表的な福利厚生が「寮」です。自動車工場の多くは寮を完備しており、家賃負担なしで、もしくは5,000円～1万円程度の低額で住むことができます。また、光熱費を負担してくれる寮や食堂がある寮も多いため、生活費を大幅に節約することができます。

自動車工場は安定した雇用がある

自動車業界は総じて、安定した雇用があります。少子高齢化による人手不足の影響もあり、自動車工場は常に求人ニーズがあるため、仕事を探すのはそれほど難しくありません。たとえば、ある工場で人間関係がうまくいかなくても、比較的早く次の工場に転職することができるでしょう。もちろん、より良い待遇・条件を求めて他の工場に転職することも可能です。

自動車工場は未経験でも働ける

自動車工場の仕事はほとんどがマニュアル化されているため、誰でもマニュアルに沿って作業をすれば問題なく働くことができます。基本的にはライン作業で、複雑な工程は少ないので、比較的短期間で仕事内容を覚えることができます。それゆえ、ほとんどの自動車工場は学歴・職歴不問で求人募集をしています。未経験でも働きやすいのは、自動車工場のメリットの一つだと言えるでしょう。

自動車工場で働くデメリット

自動車工場で働くデメリットとしては、以下の点を認識しておきましょう。

自動車工場は身体的にきつい作業もある

自動車工場での仕事は立ち仕事がほとんどであり、なかには、きつい体勢での仕事、重いものを持ち運ぶ仕事、常に動き回っている仕事もあります。慣れないうちは、疲弊したり足腰を痛めたりするケースもあり、身体的にきついと感じる人も多いようです。

自動車工場は単純作業が多い

自動車工場での仕事は、基本的に単純作業の繰り返しです。単純作業を繰り返すほうが集中力が研ぎ澄まされるという人がいる一方で、すぐに飽きてしまったり、嫌気が差したりする人もいます。単純作業が苦手な人にとっては、自動車工場の仕事はストレスになるかもしれません。

自動車工場はラインのスピードに合わせるのが大変

自動車工場の仕事はライン作業が中心になります。ライン作業では、ベルトコンベアで物が運ばれてくるスピードに合わせて作業をしなければいけません。慣れないうちは、ラインのスピードに合わせるのが大変で、時間に追われるプレッシャーを感じる人も多いようです。

自動車工場は夜勤があると体調管理が難しい

自動車工場の勤務体制は昼間と夜間の2交替制、もしくは早番・遅番・夜勤の3交替制です。いずれにしても、夜勤と日勤の交替勤務になる場合は生活リズムが不規則になりがちで、睡眠不足や疲労の蓄積から、体調を崩してしまう人もいます。夜勤で働けば夜勤手当が付きますが、体調管理が難しくなることは認識しておかなければいけません。

自動車工場の職場環境・労働環境

工場と言うと「3K（汚い・きつい・危険）」というイメージを持つ方もいるかもしれませんが、自動車メーカーは大手企業が多いこともあり、職場環境・労働環境の整備が進んでいます。

特に近年は、多くの自動車工場でロボット化・自動化が進んでいます。工場がロボットを導入する大きな目的は生産性を高めることですが、働く人にもメリットがあります。たとえば、重量物の搬送や組み立てなどの重労働をロボットが担ってくれれば、作業者の負担は大幅に軽減されるでしょう。

また、作業者の安全確保の観点でもロボットの活用は歓迎すべきことです。たとえば、危険物の取り扱いや高所作業、粉塵・騒音が発生する環境下での作業などをロボットが代替してくれれば、労働災害も減少するはずです。このように、自動車工場はロボット化・自動化が進むことで、より一層働きやすい環境へと変貌を遂げています。