アーク溶接資格の取り方は?種類や条件、費用や難易度などを解説

2024年2月29日更新

アーク溶接資格の取り方は?種類や条件、費用や難易度などを解説

アーク溶接は代表的な溶接方法の一つで、金属製造・金属加工をはじめ、自動車など機械の修理業、建設業、土木業、解体工事業など、幅広い業界で活用されています。そのため、アーク溶接の資格を持っている人は応募できる求人の幅が広がるほか、資格手当による高待遇も期待できます。今回は、アーク溶接資格の取得方法や難易度などについて解説していきます。 

溶接とは?

そもそも溶接とは、2つの別々の物質を溶かして結合させる技術のことです。溶接は大きく、「融接」「圧接」「ろう接」の3種類に分けることができます。 

融接

融接とは、接合部分に熱を加えることで溶かして結合させる溶接の方法です。アーク溶接も融接の一種で、その他、「電子ビーム溶接」「レーザー溶接」などが挙げられます。 

圧接

圧接とは、接合部分同士を加熱するとともに圧力をかけて結合させる溶接の方法です。圧接の種類としては「ガス圧接」「摩擦圧接」「爆発圧接」などが挙げられます。 

ろう接

ろう接とは、母材より低い温度で溶ける溶加材を溶かして接合部分に流し込んで接合する溶接の方法です。ろう接の種類としては、「ろう付け」「はんだ付け」などが挙げられます。 

アーク溶接とは?

アーク溶接とは、溶接棒と母材の間に気体の放電現象である「アーク」を発生させることで生じる高熱によって金属を溶解させて接合する溶接技術です。アーク溶接機につないだ溶接棒を電極として使用し、この電極と金属の接合部分にアークを発生させ、その高熱によって金属や溶接棒を溶かしながら接合していきます。アーク溶接の用途は幅広く、自動車や鉄道車両、船舶や航空機、建築物、建設機械など、あらゆる金属構造物の溶接に使われています。 

アーク溶接には様々な方式がありますが、大きくは、電極が溶融するかどうかによって「消耗電極式」と「非消耗電極式」の2つに分けられます。 

出典:日本溶接協会

消耗電極式アーク溶接

消耗電極式は、電極が溶融し、溶滴となって母材に移行する方式のアーク溶接です。電極自体が溶加材となり、電極を消耗しながら溶接をおこなうことから「消耗電極式」と呼ばれます。消耗電極式には「被覆アーク溶接」「マグ溶接」「ミグ溶接」「エレクトロガスアーク溶接」などがあります。 

非消耗電極式アーク溶接

非消耗電極式は、電極は溶融せず溶加材(溶接棒)を溶融池に送り込み、母材へ溶かし込む方式のアーク溶接です。電極からアークを発生させたところに溶加材を溶かし込んで溶接をおこないます。非消耗電極式には「ティグ溶接」「プラズマ溶接」などがあります。 

アーク溶接のメリット・デメリットとは?

アーク溶接の主なメリットとして挙げられるのが、以下の点です。 

  • 溶接時の変形が少なく、溶接部の性質(強度・気密性・水密性)に優れている。 
  • 接合材の厚さによる制約がほとんどない。 
  • アーク溶接機は小型で低コストなので、複数台を同時稼働させることで作業効率を高められる。 
  • シールドガスを使わない方式であれば風の影響を受けないため、屋外でも溶接作業ができる。 
  • アーク溶接に必要な器具は構造がシンプルなので、保守・メンテナンスが容易。 

アーク溶接の主なデメリットとしては、以下の点を認識しておきましょう。 

  • 慣れていないと溶接棒の操作が難しく、作業者によって仕上がりの差が生まれやすい。 
  • 外見から、溶接の良し悪しを判断するのが難しい。 
  • 溶接機に欠陥があったり作業方法を誤ったりすると、爆発や感電、火災などを招くリスクがある。 

アーク溶接作業者の資格を取得する方法

アーク溶接は幅広く用いられている溶接技術ですが、一歩間違えれば、感電や爆発、火災などの重大な災害が発生するリスクもあります。このような災害を防止するため、事業者はアーク溶接の業務に就かせる労働者に「アーク溶接等特別教育(正式名称:アーク溶接等の業務に係る特別教育)」を受講させなければいけないと規定されています。つまり、アーク溶接等特別教育を受講しなければ、業務としてアーク溶接をすることはできないということです。 

アーク溶接等特別教育を修了することで、「アーク溶接作業者」の資格を取得することができます。アーク溶接作業者は国家資格なので、履歴書に記載することも可能です。 

アーク溶接作業者(アーク溶接等特別教育)の資格を取得するための条件

アーク溶接作業者の資格を取得するために、特に条件はありません。18歳以上の人であれば、誰でもアーク溶接等特別教育を受講することができるため、満年齢で18歳になっていれば高校生でも受講可能です。難しい試験などもなく、講習を受講するだけで資格を取得できるので、難易度は低いと言えるでしょう。 

アーク溶接等特別教育を受講する方法

アーク溶接等特別教育は、各都道府県にある労働基準協会や労働技能講習協会などで受講することができます。受講する機関によって日程などは変わってきます。 

アーク溶接等特別教育は、学科11時間、実技10時間、合計21時間の講習があり、通常は3日間でおこなわれます。受講費用は1万円~2.5万円程度で、講習のカリキュラムは以下のとおりです。 

▼学科 

  • アーク溶接等に関する基礎知識:1時間 
  • アーク溶接装置に関する基礎知識:3時間 
  • アーク溶接等の作業の方法に関する基礎知識:6時間 
  • 関係法令:1時間 

▼実技 

  • アーク溶接装置の取り扱い及びアーク溶接等の作業の方法についての実技教育:10時間 

アーク溶接作業者以外の溶接資格

アーク溶接作業者(アーク溶接等特別教育)は国家資格ですが、民間資格でもアーク溶接の技術を証明できるものがあります。 

溶接技能者

溶接技能者は、国内規格(JIS、WESなど)に基づいて溶接をおこなう作業者のための資格です。基本級(下向姿勢の溶接)と専門級(立向・横向および上向姿勢の溶接、ならびに管の溶接)があり、さらに試験材料の種類と厚さ、溶接方法などの組み合わせによって資格が細分化されています。資格の種別としては、「手溶接(アーク溶接)」「手溶接(ガス溶接)」「半自動溶接」「ステンレス鋼溶接」「チタン溶接」「プラスチック溶接」などがあります。 

溶接作業指導者

溶接作業指導者は、溶接施工現場において、溶接作業および関連作業の指導・管理をおこなうとともに、溶接技能者の技量向上にあたる指導者向けの資格です。特に技量を必要とされる手溶接や半自動溶接に関する指導・教育をおこないうる熟練した溶接技能と実務経験が要求されます。 

溶接管理技術者

溶接管理技術者は、鋼構造物の製作などにおいて溶接・接合に関する設計、施工計画、管理などをおこなう技術者向けの資格です。官公庁が発注する工事や認定工場には溶接管理技術者が常駐することが要求されるため、資格を取得していれば、官公庁発注の工事を請け負う企業などへの転職が有利になるでしょう。 

出典:一般財団法人 労働安全衛生管理協会

アーク溶接の資格を活かせる業界・仕事

アーク溶接は金属加工をおこなう業種・工場であれば、ほぼ必要とされる技術です。アーク溶接作業者が求められる代表的な業界が以下の3つです。 

自動車部品業

自動車部品工場の仕事ではアーク溶接が必須です。工場内で各部材の溶接をおこない、その後、部品を組み立てて輸送するという流れが一般的であり、溶接する部材のサイズはそれほど大きくはありません。 

造船業

造船業においてもアーク溶接の技術が欠かせません。船舶のなかには数百メートルに及ぶものもあるため、アーク溶接をおこなう業種のなかでも大きな部材を扱う業種だと言えます。 

建設業

建設業においてもアーク溶接作業者が活躍しています。造船業ほどではないものの、比較的サイズの大きい部材を溶接するため、作業難易度は高いと言えるでしょう。 

アーク溶接作業者の資格取得に向いている人

技術を追求するのが好きな人

アーク溶接は、作業者によって仕上がりに差が生まれる技術です。「このくらいでいいか」と考える人より、「より良い仕上がりを」と技術を追求できる人のほうがアーク溶接に向いています。技術力の向上を実感しやすい仕事なので、職人気質の人ならやりがいを感じながら働けるでしょう。 

体力に自信のある人

アーク溶接の作業は、基本的に立ち仕事です。溶接する部材によっては、中腰になって長時間作業するケースもあります。そのため、ある程度、体力に自信のある人でないとアーク溶接の仕事はできないでしょう。 

集中力のある人

アーク溶接は、作業方法を誤ると感電や爆発などを招くリスクがあります。ちょっとした気の緩みから事故につながるおそれがあるため、集中力が重要になってきます。アーク溶接の仕事に就くためには、ある程度、長い時間集中して作業できることが求められるでしょう。 

まとめ

ジョブ派遣は、派遣会社(株式会社日輪)が運営している求人サイトで、製造業・派遣社員のお仕事を中心にご紹介しています。独自の研修をご用意していますので、工場での仕事が初めての方でも安心してご応募いただけます。各種溶接に関する工場派遣求人もご紹介していますので、ぜひ自分に合ったお仕事を見つけてください。 

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※参考:日本溶接協会(JWES) 

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